一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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シンポジウム » [シンポジウム4(スポンサードシンポジウム)] 褥瘡患者への対応 ~多職種連携に必要な疾患・病態への理解を深める~

シンポジウム4(スポンサードシンポジウム)
褥瘡患者への対応 ~多職種連携に必要な疾患・病態への理解を深める~

2024年6月29日(土) 14:20 〜 16:00 第1会場 (大ホールAB)

座長:渡部 芳彦(東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科)、岩佐 康行(原土井病院 歯科)

企画:地域包括ケア委員会
共催:ニュートリー株式会社

[SY4-1] 褥瘡治療の基本

○大浦 武彦1,2 (1. 北海道大学、2. 褥瘡・創傷治癒研究所)

【略歴】
大浦 武彦
1978年6月 北海道大学医学部 形成外科学講座 教授
1993年4月 北海道大学医学部附属病院長就任
1995年3月 北海道大学 定年退官(北海道大学名誉教授)、医療法人渓仁会 会長
2002年8月 医療法人社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所 所長
2020年4月 褥瘡・創傷治癒研究所 所長

【主な学会活動】
1970~ 形成外科関連研究事業 論文多数
1998~2005年 日本褥瘡学会 理事長
2009~2019年 日本下肢救済・足病学会 理事長

【表彰】
・American Burn Association: Everett Idris Evans Award(米国熱傷学会特別賞:エバンス賞)(1987年)
・日本老年医学会優秀論文賞(2005年)

【褥瘡に関する最近の著書と論文】
・大浦武彦 医療従事者のための足病治療・ケア,厚生労働省指定研究(糖尿病及び慢性腎不全による合併症足潰瘍・壊疽等の重症下肢虚血重症化の予防に関する実態調査)(H28-免疫-指定-002) 2016
・大浦武彦 「不適切なケアが褥瘡を悪くする 新しい体位変換」中山書店,東京 2013
・大浦武彦 「見て・考える褥瘡ケア 創面をみればすべてがわかる」中山書店,東京 2010
【抄録(Abstract)】
 褥瘡治療の基本は、次の点に注意することです。①体圧分散マットレスの使用の効果があるのかないのか?②看護・介護ケアによる効果の有無③栄養の効果の有無です。人の手が介在する看護師や介護士によるケアは、適切であれば治癒に向かいますが、ケアが不適切であると褥瘡は改善せず、治癒遅延してしまいます。従って特に創面の治療に必要なことは、褥瘡の創面の変化をよく観察・分析することが大切です。
 もし褥瘡が治癒しない場合、圧とずれを排除することです。圧とずれは褥瘡の発生要因でもあり、治癒阻害要因でもあります。適切なケアとは圧とずれの原因を見つけ出し、これを確実に排除することです。維持枕の不備などで治癒遅延につながる場合もあります。体位変換やギャッジアップ時の圧とずれの排除ができていない場合か、特に褥瘡患者の栄養状態がよくない状態の時に、圧とずれがかかると一晩で発生、悪化しまうことがあります。この場合、圧とずれを引き起こしている褥瘡悪化の原因を排除させることが重要なのです。すなわちどこに、どの様な力がどの方向に加わったかを考え、これを除去することです。
 平成10年度厚生労働省長寿科学総合事業研究報告によると、褥瘡患者において臨床検査値の血清アルブミン、総蛋白、ヘモグロビンが低下している患者が多く、低栄養状態であることが推測されます。また日本人の褥瘡危険要因(OHスケール)には、栄養状態の文字評価がありませんが、それ以外の言葉すなわち低栄養や浮腫は骨突出を表す警戒要因です。低栄養であるからこそ骨突出、浮腫が発生しているのです。『褥瘡予防・管理ガイドライン第4版』では、創傷治癒に有効な栄養素として、新たにコラーゲン加水分解物(コラーゲンペプチド)が推奨されるようになりました。
 今回、褥瘡の基礎知識と、褥瘡に対する適切な看護・介護ケアと、栄養についての考え方について紹介します。