The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

シンポジウム

シンポジウム » [シンポジウム8] 認知症共生社会を切り開く歯科の役割

シンポジウム8
認知症共生社会を切り開く歯科の役割

Sun. Jun 30, 2024 10:40 AM - 11:40 AM 第2会場 (特別会議場)

座長:枝広 あや子(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 認知症と精神保健)

企画:特任委員会(認知症)

[SY8-1] 認知症共生社会実現のために求められる医科歯科連携

○内海 久美子1 (1. 砂川市立病院 認知症疾患医療センター長 )

【略歴】
S63年 札幌医科大学医学部卒業
H8年 砂川市立病院精神神経科に勤務
アルツハイマー病研究で博士学位取得
H19年 砂川市立病院精神科部長就任
H22年 砂川市立病院認知症疾患医療センター長就任(現職)
H25年 NPO法人中空知・地域で認知症を支える会理事長就任
H30年  砂川市立病院副院長就任(社団)認知症疾患医療センター全国研修会代表理事(R4年退任)
R5年 砂川市立病院 副院長・精神科部長退任
【抄録(Abstract)】
2023年6月「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が制定され、2024年1月1日からの施行となった。今年は、まさに記念すべき認知症基本法施策元年にあたる。2014年には、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムである「地域包括ケアシステム」の推進が掲げられた。各自治体は、その地域の特性に応じたシステムを作り上げていく使命が与えられた。
北海道中空知地方では、砂川市立病院認知症疾患医療センターを中心に、医療・介護の連携を構築して地域包括ケアシステムを推進してきた。2004年 に“中空知・地域で認知症を支える会”を設立して、研修会・症例検討会などを開催してきた。これまでの20年間で85回研修会を開催して参加数は1万人を超えた。研修会では歯科医の先生が演者となって口腔ケアの講義を3回実施しているが、歯科医師が研修会に参加することはほぼなかった。また地域包括ケアシステムの構築には情報共有が不可欠である。砂川市においては2015年ICTを活用した地域包括ケアネットワークシステム「みまもりんく」が稼働している。医科だけではなく歯科を含む各医療機関、調剤薬局、訪問看護ステーション、介護事業所、保健センター、消防、砂川市役所介護福祉課などがリアルタイムで砂川市立病院の診療内容を参照することにより、地域完結型医療及び介護サービスの提供が可能となることを目指した。登録者数は約4500人程度(2024年2月末)。歯科医院が参照した件数は非常に少なく、ほとんど活用されていないのが現状である。
近年、咀嚼機能の低下や歯周病が認知機能低下や認知症発症と関連するという報告が多数されているが、これらの多くは歯科主導の研究であるため、医科と歯科が連携して研究を進める必要性がある。そこで2021年日本老年精神医学会と日本補綴歯科学会が医科歯科連携研究(ECCO)プロジェクトを発足して口腔機能と認知機能の相関に関するエビデンスを共創するための活動を始めた。まず初めに両学会の専門医に、認知機能と口腔機能に関する意識調査に着手した。その結果、認知症専門医、歯科医師ともに医科歯科連携の重要性を強く認識しているものの、実際に医科歯科連携が行われている場面が少ないことも明らかとなった。また口腔機能と認知機能の低下や認知症の発症さらにはBPSDと関連性を共通認識として持っていることが明らかになり、今後は口腔機能とBPSDの関連を明らかにしていく研究や、口腔機能への介入が認知機能に及ぼす影響などの研究に着手している。
地域包括ケアシステム構築において歯科医の役割は非常に重要であり、認知症対応力向上研修を受講していただいて認知症の知識を深めることはもちろんのこと、認知症医療や介護職と積極的に連携を図ることが期待される。