[SY8-2] 認知症共生社会に生きる歯科医師の育成
【略歴】
1997年 日本歯科大学新潟歯学部卒業
1998年 日本歯科大学新潟歯学部附属病院臨床研修歯科医
1999年 日本歯科大学新潟歯学部 歯科補綴学教室第3講座 助教
2001年 日本歯科大学新潟歯学部附属病院総合診療科 助教
2010年 日本歯科大学新潟病院 総合診療科 講師
2014年 日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科 准教授 現在に至る
1997年 日本歯科大学新潟歯学部卒業
1998年 日本歯科大学新潟歯学部附属病院臨床研修歯科医
1999年 日本歯科大学新潟歯学部 歯科補綴学教室第3講座 助教
2001年 日本歯科大学新潟歯学部附属病院総合診療科 助教
2010年 日本歯科大学新潟病院 総合診療科 講師
2014年 日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科 准教授 現在に至る
【抄録(Abstract)】
歯科医師の認知症対応能力向上が求められる中、将来の歯科医療を担う歯学部の学生も認知症について以前よりも深く学ぶことが求められるようになった。認知症の特性や口腔に生じる問題、摂食嚥下機能への影響などの知識はもちろん、患者の抱える問題を専門領域にとらわれず、心理的・社会的背景も踏まえ、患者に寄り添う医療を提供する能力を育てることが求められていることが「歯学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版」から読み取ることができる。各大学がそれぞれの環境の中でこれを実現するためのカリキュラム立案をしている。
これらを実現するうえで、本学では1987年から取り組んできた歯科訪問診療がとても重要な基盤となっている。5年次の臨床実習では歯科訪問診療を行う専門の診療科にて、専属の歯科医師、歯科衛生士の訪問診療に同行し、個人宅、各種高齢者施設、病院等での歯科訪問診療を経験する。訪問先の高齢者施設では認知症の方の歯科訪問診療を見学し、術前のバイタルサインの測定や口腔衛生管理については学生が認知症の方やそのご家族、施設職員等とコミュニケーションをとりながら実施する。また、訪問診療の現場では、多職種が話し合う場面も多く、多職種連携を理解する上ではとてもよい機会となる。現在ではICTを活用して他職種と連携を取る場面もあり、患者背景を知るとともに、地域の他職種がどのように考え、行動しているのかを学ぶ良い機会となっている。単に診療や口腔ケアを行うだけの歯科訪問診療をみせるのではなく、その背景にあることまでを教育できるかが重要と考えている。
また、2018年12月より開始した認知症カフェも認知症を広い視野で学ぶ場となっている。本邦初の歯学部併設の認知症カフェである「エヌ・カフェ・アングル」は、学生を運営の中心に加えた認知症カフェである。毎回さまざまな企画を学生が考え、指導にあたる歯科医師、看護師、管理栄養士とともに月1回のペースで開催している。参加する認知症当事者、ご家族、多職種にとっては、気軽に情報交換のできるつどいの場となっている。学生は座学では認知症を理解していても、実際にコミュニケーションをとる場面では戸惑うことが多い。上手くいったことや反省点に向き合いながら、少しずつ認知症の方やそのご家族の思いを理解して行く様子がみられた。また、地域の介護支援専門員、管理栄養士、訪問看護師、地域包括支援センター職員等、多様な職種の参加や、管理栄養士を目指す他大学の学生とのコラボレーションもあり、学生はこうした方々との交流を通じて、多職種の業務内容や連携の在り方について考える機会を得ることができた。
本シンポジウムでは本学の取り組みを紹介するとともに、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の施行を受け、認知症共生社会で歯科がどのように役割を果たすべきか、教育の現場では何ができるのかを考えたい。
歯科医師の認知症対応能力向上が求められる中、将来の歯科医療を担う歯学部の学生も認知症について以前よりも深く学ぶことが求められるようになった。認知症の特性や口腔に生じる問題、摂食嚥下機能への影響などの知識はもちろん、患者の抱える問題を専門領域にとらわれず、心理的・社会的背景も踏まえ、患者に寄り添う医療を提供する能力を育てることが求められていることが「歯学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版」から読み取ることができる。各大学がそれぞれの環境の中でこれを実現するためのカリキュラム立案をしている。
これらを実現するうえで、本学では1987年から取り組んできた歯科訪問診療がとても重要な基盤となっている。5年次の臨床実習では歯科訪問診療を行う専門の診療科にて、専属の歯科医師、歯科衛生士の訪問診療に同行し、個人宅、各種高齢者施設、病院等での歯科訪問診療を経験する。訪問先の高齢者施設では認知症の方の歯科訪問診療を見学し、術前のバイタルサインの測定や口腔衛生管理については学生が認知症の方やそのご家族、施設職員等とコミュニケーションをとりながら実施する。また、訪問診療の現場では、多職種が話し合う場面も多く、多職種連携を理解する上ではとてもよい機会となる。現在ではICTを活用して他職種と連携を取る場面もあり、患者背景を知るとともに、地域の他職種がどのように考え、行動しているのかを学ぶ良い機会となっている。単に診療や口腔ケアを行うだけの歯科訪問診療をみせるのではなく、その背景にあることまでを教育できるかが重要と考えている。
また、2018年12月より開始した認知症カフェも認知症を広い視野で学ぶ場となっている。本邦初の歯学部併設の認知症カフェである「エヌ・カフェ・アングル」は、学生を運営の中心に加えた認知症カフェである。毎回さまざまな企画を学生が考え、指導にあたる歯科医師、看護師、管理栄養士とともに月1回のペースで開催している。参加する認知症当事者、ご家族、多職種にとっては、気軽に情報交換のできるつどいの場となっている。学生は座学では認知症を理解していても、実際にコミュニケーションをとる場面では戸惑うことが多い。上手くいったことや反省点に向き合いながら、少しずつ認知症の方やそのご家族の思いを理解して行く様子がみられた。また、地域の介護支援専門員、管理栄養士、訪問看護師、地域包括支援センター職員等、多様な職種の参加や、管理栄養士を目指す他大学の学生とのコラボレーションもあり、学生はこうした方々との交流を通じて、多職種の業務内容や連携の在り方について考える機会を得ることができた。
本シンポジウムでは本学の取り組みを紹介するとともに、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の施行を受け、認知症共生社会で歯科がどのように役割を果たすべきか、教育の現場では何ができるのかを考えたい。