The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

シンポジウム

シンポジウム » [シンポジウム9] 歯科口腔保健法に基づく今後の高齢者歯科保健活動 ~歯と口腔の健康づくりプランをふまえたアプローチ~

シンポジウム9
歯科口腔保健法に基づく今後の高齢者歯科保健活動 ~歯と口腔の健康づくりプランをふまえたアプローチ~

Sun. Jun 30, 2024 9:00 AM - 10:30 AM 第3会場 (中ホール)

座長:三浦 宏子(北海道医療大学歯学部保健衛生学分野)

企画:学術用語委員会

[SY9-2] 札幌市生涯歯科口腔保健推進計画が目指す高齢者歯科保健対策

○秋野 憲一1 (1. 札幌市保健福祉局 )

【略歴】
1998年 北海道大学歯学部卒
1998年 北海道大学歯学部付属病院 医員
1999年 北海道立渡島保健所
2001年 国立公衆衛生院専門課程(分割前期課程)修了
2003年 北海道保健福祉部地域保健課 主任技師
2009年 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(博士(歯学)取得)
2010年 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課 主任技師
2014年 札幌市保健福祉局保健所 歯科保健担当課長
2015年 厚生労働省老健局老人保健課 医療介護連携技術推進官
2016年 厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室 兼任
2017年 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長
2018年 札幌市保健福祉局保健所 成人保健・歯科保健担当部長
【抄録(Abstract)】
 厚生労働省が令和5年に策定した歯科口腔保健の推進に関する基本的事項に基づき、多くの地方自治体において、歯科保健計画の改定が行われ、札幌市においても、第2次札幌市生涯歯科口腔保健推進計画(前期計画)を策定した。地方自治体において、様々な保健医療福祉サービスが必要となる後期高齢者の増加への対応や健康維持を目的とした介護予防やフレイル対策の充実は、最優先の行政課題であり、歯科保健計画においても、高齢者に対する歯科保健医療対策にどのような取り組みを位置づけ実行していくべきか、自治体の果たす責任と役割は大きい。
 札幌市生涯歯科口腔保健推進計画においては、条例で掲げる5つの基本理念に沿って、市民の健康寿命の延伸及び誰一人取り残さない歯科口腔保健の基盤整備は図ることとしており、基本理念ごとの高齢者歯科保健対策の概要は次の通りである。
「基本理念1 市民の生涯にわたる歯科健診の充実」
 国における国民皆歯科健診の議論を見据え、生涯を通じた歯科健診の充実を掲げている。高齢者対策については、既に導入済みの歯科医院外来での後期高齢者歯科健診に加えて、歯科医院への通院が困難な在宅の要介護高齢者に対する訪問歯科健診事業の導入を盛り込んでいる。
「基本理念2 乳幼児期から高齢期までの世代に応じた健康教育や普及啓発」
 これまで、介護予防事業として歯科衛生士による口腔機能向上の関する教室等を実施してきたが、今後、オーラルフレイルの新たな基準等を活用し、高齢者の通いの場等を活用した歯科医師、歯科衛生士による健康教育等のオーラルフレイル対策に取り組む予定である。
「基本理念3 要介護者等、誰一人取り残さない歯科保健医療サービスの確保」
 介護保険施設における歯科保健対策の充実に向け、在宅歯科医療を担う歯科医師への研修や介護職員への口腔ケア研修等を実施しているが、摂食嚥下障害を有する高齢者への対応や認知症患者への歯科医療の確保が強く求められていることから、これらのあり方検討を行う予定である。
「基本理念4 公衆衛生的見地及び科学的根拠に基づく取組による健康格差の縮小」
 主に、子供のう蝕対策としてのフッ化物応用の充実を意図した基本理念であるが、高齢者の根面カリエスへの対応等、今後、高齢者に対する効果的なフッ化物応用が出てくれば、検討することとしている。
「基本理念5 関係団体・関係機関との連携・協力による歯科口腔保健の取組の推進」
 今回の計画において、大学との連携、共同調査研究の実施を明記した。オーラルフレイル対策、要介護高齢者に対する歯科保健医療の確保等、大学との連携により、データの収集と分析に取り組む予定である。
 シンポジウムにおいては、自治体が高齢者歯科保健対策において果たすべき役割と共に、地域の歯科医師会、大学との連携による今後の取組の可能性について報告することとしたい。