大会長挨拶
第54回北海道作業療法学会学術大会開催にあたって
第54回北海道作業療法学会学術大会
大会長 佐々木 努
この度,第54回北海道作業療法学会学術大会大会長を拝命致しました.このような名誉ある機会を頂き,心を躍らせています.
私は,23年間,主としてアカデミア領域で作業療法士としてのキャリアを積んできました.協会・士会活動,研究活動,臨床活動,社会貢献活動,大学運営活動を通じて,対外的な活動も多く経験してきました.そのような背景もあり,作業療法という職業を俯瞰する機会に恵まれていたと考えています.また,幸いにも,私の周りにはアクティビティの高い仲間が多く,作業療法という仕事の魅力や課題を共有しながら,作業療法の未来に思いを馳せてきました.作業療法という仕事は,社会に求め続けられるのだろうか,求め続けられるためには私たちは何をしなければならないのか,いつか職業選択を迫られる現在の子どもたちは作業療法という仕事に魅力を感じるのだろうか.多くの作業療法士が集う学術大会で,今一度立ち止まって深慮したいと思います.
第54回北海道作業療法学会学術大会のテーマは,「生活行為。その先の共創」です.『共創(co-creation)』は,経済学分野で誕生した言葉だそうです.目まぐるしい速さで変化する社会に適応するために,他者や他業種と共に新たな価値や技術を設定し,前進していくという意味があります.作業療法にも当てはめることができる考えです.そこで,本学術大会では,この『共創』をテーマに取り入れることにしました.作業療法はあくまで社会に存在する仕事の一つでしかありません.私たち作業療法士がどんなに素晴らしい仕事であると思っていても,社会に不要と判断されれば淘汰されていきます.皆さんご存じの通り,2018年に改訂された作業療法の定義(日本作業療法士協会)では,「作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す」と記されています.私たちは,作業療法(=作業に焦点を当てた実践)を通して社会に貢献していることになります.本学術大会のテーマに重ねますと,作業療法士は,臨床・教育・研究,様々な領域での生活行為に焦点を当てた実践(=作業療法)を通して,社会に貢献していることになります.その実践過程で,様々なパートナーと『共創』しているはずです.例えば,対象者との共創では,時代に合わせた幸福や健康を高める方法を個人や社会に提案することがあるかもしれません.本学術大会では,どのようなパートナーと何を共創するのか,共創するための作業療法士像とは何か,について議論し,共有したいと考えています.その場の一つとして,特別講演,各種シンポジウムの先生方には,「私の考える『生活行為.その先の共創』」を提示して頂く予定です.
新型コロナウィルス感染症が5類感染症に移行したこと,多くの他職種・他業種の学会が対面に移行していることを受け,本学術大会では,講演,シンポジウム,市民公開講座,SIGはもちろん,口述発表もすべて対面で行います(講演,シンポジウム,市民公開講座はオンデマンド配信あり).また,入職1年目の新人から5年目程度までの若手が集うことを目的に,軽食などを用意した学術セッションを企画しています.学会は,知識や経験を共有する場であると共に,仲間を増やす場所です.まさに,共創パートナーと出会う場所です.是非,周りの同僚,先輩,後輩と共に千歳に足を運んでください.実行委員一同,皆様と「共創」できることを心待ちにしております.