大会長挨拶
第27回日本統合医療学会学術大会
大会長 山田 靜雄
静岡県立大学大学大学院薬学研究院
薬食研究推進センター
この度、第27回日本統合医療学会学術大会を 令和5年12 月 16 日(土)~17日(日)に静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)にて開催させていただくにあたり謹んでご挨拶を申し上げます。
近年の医学・医療の目覚ましい進歩や生活環境の整備により 多くの病気の治療が可能になった一方で、疾病構造も急性疾患から生活習慣病中心の慢性疾患へシフトするとともに、心の病や多剤服用が増え医療費は増加の一途を辿っています。健康寿命をおびやかす要支援・要介護の原因として、認知症、運動機能の障害であるロコモティブシンドロームやフレイルなどがあり、それらのケアと予防は重要な課題となっています。また高齢者においては複数の疾患を併発している患者が多く、食欲不振、摂食・嚥下障害、便秘、認知機能障害、うつ状態やフレイルなど高齢者の生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすポリファーマシー(多剤服用)による抗コリン性有害事象が大きな社会的課題となっています。高齢者が頻用する薬剤には抗コリン作用を示す薬剤が多く(約600剤との報告)、本邦では海外に比べポリファーマシー対策の遅れが懸念されます。
世界保健機構(WHO)によると、「健康とは、身体的、精神的、社会的良好な状態のことで、単に病気がない状態だけではない」と定義されています。健康の維持・増進のための基本的要素は、食・栄養、運動と休養です。自らの健康管理に努めるセルフケア・セルフメディケーションが普及し、健康増進や病気の予防・治療を目的として、ビタミン・微量元素などの食・栄養療法・サプリメントや機能性食品、ハーブ療法、アロマセラピー、マッサージ、アーユルヴェーダ、鍼灸、ヨーガ、カイロプラクティック、オゾン療法、温泉療法などのさまざまな相補(補完)医療や伝統医療とともに、これらを近代西洋医学と組み合わせた統合医療の実践により、費用対効果が高くQOLを重視した全人的医療が期待されています。統合医療には、医療従事者が中心となる医療モデルと地域のコミュニティが主体となる社会モデルがあり、医療、保健、福祉の三位一体の体制で統合された包括的ケアシステムの構築が重要となっています。
静岡大会は「健康長寿と統合医療―こころ・からだ・たべもの・くすり」というテーマで、学術的および実践的な研究成果を発表・議論し統合医療の更なる発展を期すものです。具体的には、特別講演、シンポジウム、ワークショップ、教育セミナー、一般演題発表、機器展示など魅力あるプログラムを企画しています。「人生100年時代を健康で生きぬく」ための秘訣について、多様な切り口から統合医療的視点をふまえて議論していただきます。市民公開講座では、自由民主党統合医療推進議員連盟会長の橋本聖子参議院議員から「日本発の統合医療を目指してーキュアからケアへ、そして健康なまちづくり」と題してご講演をいただきます。本大会には医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士をはじめとして、鍼灸師、アロマセラピスト、ヨーガ療法士などさまざまな医療従事者が一同に集い交流します。静岡県内開催は初めてであり、学術研究者のみならず医療専門職や市民参加型の会として、統合医療への理解を深めるとともに静岡から「健康長寿と統合医療」に関する新たな情報発信の機会にしたいと考えています。
静岡市は、徳川家康公が人生の約3分の1を過ごされた地であり、幼少時代に教育を受けたとされる臨済寺、大御所時代に居城となった駿府城などゆかりの地を多数有します。美しい富士山と駿河の海、温暖な気候や美味しい食事など、家康公が静岡を愛されたわけを実感していただけることと存じます。
昨年、大会長を拝命して以来、ご参加いただきます皆様にとって実り多い会となりますよう鋭意準備を進めてまいりました。4年ぶりの対面形式の開催予定ですので多くの皆様のご参加を心からお待ち申し上げております。本学会開催にあたり、多大なご支援・ご協力を賜りました皆様に心より感謝申し上げます。
