第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

指定演題

指定演題2
CNSが介入に難渋した事例

Sun. Jul 1, 2018 9:05 AM - 10:05 AM 第4会場 (2階 福寿)

座長:松本 幸枝(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 看護管理室), 座長:冨岡 小百合(大阪府立中河内救命救急センター 看護部)

[指定2-5] 経過が長期化しゴールがみえない外傷による高度侵襲術後患者の受け入れに不安があるチームへの調整

二藤 真理子 (地方独立行政法人りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター集中治療室)

【諸言】
外傷により高度侵襲を受け、後方病棟へ転床後もしばしば敗血症により集中治療室と後方病棟を行き来する事例を経験した。ケアが複雑で所謂「手間がかかる」、また、変容した身体と向き合えない患者に対し、後方病棟の看護師達は複雑な思いを抱いており、転床受け入れに不安があった。これまでの入院プロセスを振り返り、目標を患者と多職種で共有し、看護のあり方を見直した。結果、患者の行動変容を認め、集中治療室から後方病棟へ移行できたので報告する。

【倫理的配慮】個人が特定できないよう配慮し、学会発表以外の目的で情報を用いないようプライバシー保護に努めた。また、所属病院看護局の倫理審査を受け承認を得た。

【事例】
A氏、40歳代男性。
病名:外傷性膵・左腎・横行結腸・上腸間膜静脈損傷。
入院期間:892日、CNS介入期間: 648~835病日目
現病歴:膵・十二指腸全摘、左腎摘、回腸人工肛門造設、胃空腸吻合と内瘻化拡張術を繰り返し施行。206病日目に後方病棟へ転床したが、胃・結腸断端縫合不全部に皮膚瘻を形成、食事が瘻孔から漏出し胆管炎併発、敗血症により集中治療室と後方病棟を行き来していた。648病日目に尿路感染による敗血症で集中治療室管理となった。

【結果・考察】
(1)主治医・看護師(集中治療室、後方病棟、各々の管理者)・理学療法士(以下、関係者と略す)と経過を振り返り問題点と課題を抽出、A氏の体重増加と気持ちの変化を待った時期:皮膚瘻の根治術を行うために、低栄養改善が必要であるという見解を主治医から得て、手術待機期間中に本人の現実認知を促進し、低栄養改善に取り組んだ。また、人工肛門は恒久的なものであるが、皮膚瘻根治術後は退院が見込めることを主治医から説明してもらった。また、関係者間でカンファレンスを持ち、複雑な管理が簡素化するまでは、集中治療室で経過をみることに合意形成を得た。A氏は「自己管理とか無理」と述べていたが、「将来ジーパンとか履けるかな」等の新たな自己をイメージする発言をするに至った。A氏に現状と希望、課題を伝え、手術待機期間中に支持的態度で認識が徐々に変化する過程を待ったことは、A氏の成長を促したと考えられる。

(2)根治術後、状態が安定しコントロール感覚を高めるための介入を強化した時期:体重が増加し瘻孔閉鎖、大腸・胃幽門部切除術,回腸人工肛門再造設を施行した。状態安定後は、膵性糖尿病の自己管理、離床、ストマ管理を主軸とした自己管理能力を強化するために集中治療室看護師間でカンファレンスを重ね、ステップアップできるよう段階的に目標を立案、達成できるよう支援的に関わった結果、A氏はストマ管理以外目標達成できた。また、転床のために関係者間でカンファレンスを複数回重ね、835病日目に転床できた。A氏の経過を関係者で共有し、問題を皆で検討しながら進めたことでA氏だけではなく、チームの気運を高めたと考える。