[指定P1-1] My proud 我が施設のICU紹介
~心臓血管外科集中治療室に勤務する看護スタッフの課題~
A病院は、地域および日本の医療に貢献する目的で2007年4月に開設された。病院の使命は、埼玉県全域を範囲とし、がん、心臓病、脳卒中、救命救急に対する高度専門医療に特化し、かつ高度な医療を提供することである。2015年には国際的な病院機能評価にあたる「JCI: Joint Commission International」の認証を取得している。A病院が有する集中治療室は、それぞれの分野ごとに設置されており、当部署は特定集中治療管理料4、入室基準は「心臓血管外科術後および心疾患を有する患者で集中治療を必要とする患者」を対象とし、部署名は「CICU:Cardiovascular Intensive Care Unit」である。病床数は14床である。年間入室件数は、約700件であり、そのほとんどが術後患者である。主な術式は、冠動脈バイパス術(off-pump)、大動脈弁置換術、経カテーテル的大動脈弁置換術、僧房弁置換術・形成術、上行・下行動脈置換術、ステントグラフト内挿術、などである。看護体制は、2:1配置であり、診療体制は集中治療医1名、心臓血管外科医6名との協働体制である。また、臨床工学技士の常駐を整備しており人工呼吸器管理を看護師と協働して行っている。(看護スタッフのうち呼吸療法認定士は6名)看護スタッフは、看護師長(認定看護管理者)、副看護師長(救急看護認定看護師)、主任2名、スタッフ36名である。スタッフの平均臨床経験年数は、6.2年(SD3.95)である。標準化教育プログラムは、一次および二次救命処置は受講率100%でありその他、各個人のスキルアップとして災害、外傷、集中治療をそれぞれ分野ごとに数名ずつ取得している状況である。当部署の臨床経験5年以下の割合は半数に及ぶ。看護スタッフの大半は入職時の配置以降、異動せず臨床経験年数がCICU在籍年数となる。2年前より集中治療室の新人配置はなく、卒後2年目以上で構成されている。当部署の心臓血管外科術後患者は、多くの薬剤と、生命維持装置を始めとするME機器が使用されており、各種パラメータの解読や薬剤管理、定期的な電解質チェックに必要な採血、ベッドサイドケアなど術後管理はめぐるしい。しかし、ここ数年同じ看護スタッフで構成される当部署は、相互理解のもと日々業務は円滑に進められており、これは最大の強みとなっている。また、2015年3月に「集中治療室における臨床工学技士業務に関する提言(日本臨床工学技士会)」を受け、臨床工学技士の常駐が3年前より開始となった。これにより集中治療医の監督・指導のもと、臨床工学技士による人呼吸器管理および離脱が7時から21時まで行われ、21時以降は夜勤看護師に引継がれている。引き継いだ看護師は、「引継ぎ内容」を参考に観察、ケアにあたり、設定変更が必要な時には当直医へコールする、という連携体制を確立している。現在、「看護師特定行為研修」を1名受講中であり、今後はチーム医療のさらなる推進を目指し基盤を作りたい。一方で、臨床経験5年以下の看護スタッフを5割抱える我が集団の弱みは、「事象を科学的根拠に基づくアセスメントと優先順位に即したアクションへの意思決定」に迷いが見られる時がある。特に、水分管理では、術後侵襲ステージに即した判断に「術前体重の呪縛」が垣間見える。ペースメーカ、βブロッカー剤の使用などは、血管内脱水時に頻脈として出現しにくく、急性循環不全に関する臨床症状をマスクしてしまう可能性をはらんでいる。術後の血圧の変動はいわゆる「心外術後の日常的なプロセス」となりがちであり、時に再開胸のタイミングを見逃す危険性がある。今後は、心臓血管外科の特徴を踏まえつつ課題をクリアしさらなる安定した集団を目指したい。