第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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教育講演

教育講演6
敗血症の病態を理解してケアに結びつける

Sun. Jul 1, 2018 11:20 AM - 12:20 PM 第2会場 (5階 小ホール)

座長:江川 幸二(神戸市看護大学)

[EL6] 敗血症の病態を理解してケアに結びつける

西田 修 (藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座 集中治療部)

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世界で数秒に1人が敗血症で命を落としている。敗血症は、あらゆる年齢層が罹患する重篤な疾患であり、発症率、致死率も高く、集中治療領域で最も重要な症候群の一つであると言える。発症早期から、一刻を争う迅速かつ適切な全身管理が必要とされ、単に抗菌薬治療に留まらず、初期蘇生、人工呼吸管理、栄養管理など、様々な集学的アプローチを必要とする。
本講演では、
1. 敗血症の病態生理
2. 敗血症の新国際定義と新診断基準
3. 敗血症の治療の概略とトピックス

について、概説する。
1. 敗血症の病態生理
病原体やその構成成分が、免疫担当に認識されるとサイトカインが産生される。サイトカインは病原体の排除に作用するが、自己の組織傷害も惹起する。傷害された自己の細胞から放出されたヒストン、HMGB1、ミトコンドリア断片などは、病原体と同様の炎症反応を惹起させ、炎症反応が増幅される。これらの炎症反応が全身に広がり、自己細胞が連鎖的に傷害され、臓器障害が進行していく病態が敗血症である。よって、敗血症は病原体そのものの作用によって生じている病態というよりは、病原体を排除しようとする過剰な免疫反応により生じてる病態といえる。
2. 敗血症の新国際定義と新診断基準
【旧定義】感染によって発症した全身性炎症反応症候群(SIRS)を「敗血症」、更に臓器障害を伴うものを「重症敗血症」、十分な輸液負荷を行っても低血圧が持続するものこれを「敗血症性ショック」と定義した。
【新定義】2016年2月発表された新定義では、敗血症を「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因する生命を脅かす臓器障害」とし、「重症」敗血症の用語を廃止した。また、SIRSの診断基準を満たすことは問われなくなった。さらに、敗血症性ショックは「大幅な死亡率増加につながる循環不全と細胞代謝の異常を呈する敗血症のサブセット」と定義された。
【新診断基準】
新定義の概念では、臓器障害は敗血症の診断に必須となる。ため、臓器障害の評価として、SOFAスコアを用い、 「感染症により、SOFAスコアのベースラインから2点以上の急激な増加を認めるものを敗血症と診断する」とされた。また、敗血症を疑うための簡便なスクリーニングツールとしてqSOFAが新しく導入され、呼吸数22回/分以上、GCS15未満、収縮期血圧100mmHg以下の2項目以上を満たす場合を陽性とした。
敗血症性ショックの新診断基準は、「十分な輸液にも関わらずMAP≧65mmHgを維持するために血管作動薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol//L(18mg/dL)を超えるもの」とされ、乳酸値の具体的な値が診断基準に盛り込まれた。
3.敗血症の治療の概略とトピックス
日本集中治療医学会と日本救急医学会が合同で作成した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2016)の紹介を行い、初期蘇生、Post-Intensive Care Syndrome(PICS)早期リハビリなどのホットな話題に触れながら、看護の視点からもお話したい。