第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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教育講演

教育講演7
東京オリンピック・パラリンピック2020へ向けて、テロに対する医療対応は大丈夫か?

Sun. Jul 1, 2018 1:40 PM - 2:40 PM 第1会場 (5階 大ホール)

座長:剱持 功(東海大学 看護師キャリア支援センター)

[EL7] 東京オリンピック・パラリンピック2020へ向けて、テロに対する医療対応は大丈夫か?

大友 康裕 (東京医科歯科大学 大学院救急災害医学分野)

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2020年東京オリンピック・パラリンピック大会をひかえ、わが国でテロが発生するリスクは決して低くない。現在、中東、アメリカ、ヨーロッパで毎週のようにテロが発生している。一方、多くの国民は内心では「日本は平和な国。テロは起こらない」と考えている。しかしながら世界からは「日本は様々な手段のテロが世界で初めて発生したテロ先進国」と見られている。一般市民を無差別に標的とした世界初の爆弾テロとして三菱重工業東京本社ビル爆破事件(1974年8月30日)が、同様に化学テロとして東京地下鉄サリン事件(1995年3月20日)が発生した。また日本は世界唯一の原爆被爆国であり、2011年には原子力発電所事故も経験している。2008年の秋葉原通り魔事件はトラックの暴走という手段が用いられた世界初の無差別テロである。
イスラム国は、「今後は世界のどこであろうと、日本国民、日本権益を発見次第、我々の戦士、仲間による攻撃の対象となった」宣言している。世界の若者へのSNSを活用した過激思想の宣伝工作を通して、多数の「ホームグロウンテロリスト」を生み出している。さらに十分に訓練されたテロリストを、スリーパーとして数年かけて潜伏させ、テロの準備を行う手法もとる。東京オリンピック2020に照準を合わせていてもおかしくはない。北朝鮮も米国と軍事衝突となった場合、日本国内に潜伏しているとされる数千人の工作員が、日本国民をターゲットとしてテロ行為を行う可能性がある。
わが国でテロが発生しないことを祈るが、備えを怠らないことが最大の抑止力であると考える。
地下鉄サリン事件および2001年ニューヨーク同時多発テロを受けて、わが国のテロ対策の強化が、内閣官房・防衛省・警察庁・消防庁・厚生労働省において進められている。しかしテロ被害者に対する医療対応は、必ずしも有効な体制が構築されているとは言い難い。わが国の地震等の自然災害への医療対応は、阪神淡路大震災後、数多くの震災を経験する毎に、対応体制が改善されてきた。一方、テロに対する医療対応は、阪神淡路大震災と同じ年に発生した地下鉄サリン事件以降、明確な進歩がないと言える。
講演では、過去のテロ事件の個々の概要を紹介し、わが国のテロに対する急性期医療に関する問題点を示すとともに、東京オリンピックへ向けて解決すべき課題を提示する。