第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

教育講演

教育講演8
補助循環の最新治療と安全管理 〜瀕死の患者を救うための道具と地図と知識を持とう!〜

2018年7月1日(日) 13:40 〜 14:40 第2会場 (5階 小ホール)

座長:小泉 雅子(東京女子医科大学大学院看護学研究科)

[EL8] 補助循環の最新治療と安全管理

立石 実 (聖隷浜松病院 心臓血管外科)

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「補助循環」は命の根源である心臓が動かなくなった患者を救命するための唯一の究極の手段です。様々なデバイスの開発により、10~20年前には助けられなかった患者を救命できるようになりました。しかし、そんな死の淵にいる患者を救うには、デバイス(=道具)だけでなく、治癒に導く道しるべ(=地図)と、そして医療者の「知識」は極めて重要です。
 
(1)補助循環の歴史的な流れと位置づけ:現在、IABP、PCPS(VA-ECMO)、体外式VAD、植込型VADなど様々な補助循環があります。これらの歴史的な流れや、これから導入されるインペラなどの新しいデバイスを含めた各デバイスの特徴(補助流量、アクセスルート、侵襲性、抗凝固管理、補助可能な期間など)、治療のおける位置づけなど全体像を知ることで、「道具」の使い分けをマスターしましょう。

(2)補助循環の管理のツボはKY(危険予知):瀕死の患者を救うのは、医療者にとっても危険な細く暗い道を進むようなものです。そんな道を手探りで進むのは不安ですし、何より危険です。より安全に、よりよい方向に進むために、何を指標にして進むべきか?その道にどんな危険があるのか?危険に陥らないようにするためにはどうするべきか?危険に陥った時にはどんな手段があるのか?を知っておくことが、患者を救う手段です。また、救うためのデバイスは様々ですが、補助循環の基本的な目標は全てのデバイスに共通しており、「臓器灌流を維持する」ことと「うっ血を防ぐ」ことです。見るべき指標、予測される危険、危険に陥った時の対処について解説します。

(3)医の倫理:瀕死の患者をなんとか救い出し、元気になった姿を目の当たりにすることは、医療者にとって大きな喜びです。しかし、どうしても救うことができない患者もいます。補助循環を使うことは、単なる延命措置になる可能性を常に孕んでいます。そんな時に、患者本人や家族の想いを尊重して、よりよい治療の選択ができるようにするためにはどうすればよいのか?終末期における意思決定支援などについて、ガイドラインなどを踏まえて共に考えていきたいと思います。

「重症な患者さんを助けたい」という想いがあってこの学会に参加されている方が多いと思います。私の個人的な目標は「今まで救えなかった患者さんを救うことで、医学の進歩に1mmでも貢献すること」、そして「どんなに重症でも、患者さんや家族を幸せにすることをサポートすること」です。講演を聞いて下さる方にこの想いが伝わるようにお話したいと思っています。