第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O1群
呼吸・循環管理

Sat. Jun 30, 2018 2:30 PM - 3:30 PM 第4会場 (2階 福寿)

座長:伊藤 聡子(神戸市看護大学), 座長:山崎 千草(東京女子医科大学大学院)

[O1-5] ICU看護師がARDS患者に実践する体位管理の判断

荒木 隆志1, 遠藤 みどり2, 渡辺 かづみ2 (1.山梨県立大学大学院看護学研究科看護学専攻急性期看護学分野, 2.山梨県立大学)

<背景>近年, 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome: 以下 ARDS)患者に対する腹臥位等の体位管理は, 酸素化の改善に有効であることが明らかにされている. しかし, 明確なガイドラインや指針がなく, 呼吸・循環動態への影響や医療事故等の弊害が指摘されている. 看護師が安全・安楽な体位管理を実践するためには, 全人的な看護師独自の判断が重要であるが, 先行知見は希少である. そこで, 本研究では, ICU看護師がARDS患者の酸素化の改善に向けて実践する体位管理の判断を明らかにしたいと考えた.<目的>ICU看護師がARDS患者の酸素化の改善に向けて実践する体位管理を, どのような判断で行っているかを明らかにする<方法>質的記述的研究デザイン. 研究参加者: ARDS患者への看護実践の経験があるICU経験年数 5年目以上の看護師. 調査方法: 半構成的面接法. 分析方法: 逐語録から, 本研究の目的ついて語られた内容をデータとしてコード化し, コードの意味内容の類似性に着目して, サブカテゴリー, カテゴリーを生成した. 研究参加者へのコードの確認と教員のスーパーバイズを受け, 分析の真実性・信憑性の確保に努めた. 倫理的配慮: 所属大学の研究倫理審査委員会及び研究協力施設の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した. 研究参加者には, 自由意思の尊重, 拒否する権利, 及びプライバシーの確保等を文書と口頭で説明し同意を得た.<結果>研究参加者は3名で, 臨床経験年数, ICU経験年数共に9~17年であった. 面接回数は, 1回目の面接の内容の確認や不明な部分の確認が必要な看護師2名に対して日程調整を図った上で, 2回目の面接を実施した. 面接時間は, 1名あたり平均65.6分であった. ICU看護師がARDS患者に実践する体位管理の判断について分析した結果, 76のコード, 30のサブカテゴリ―から, <多角的所見による酸素化・体位効果の評価>,<酸素化の悪化・改善の見極め>,<低酸素の許容限界の見極め>,<循環動態の変動と変動要因の推測>,<苦痛の多角的な評価>,<苦痛を考慮した鎮痛・鎮静・体位選択とICの必要性>,<医療者間の協議の中での危険予測とリスク評価>,<安全確保のための体制と方法の見極め>の8つのカテゴリーが生成された.<考察>本研究のICU看護師は, ARDS患者の呼吸状態や循環動態を反映する情報を経時的, かつ多角的に捉え, 体位管理の実施や中止, 実施効果の判断をしていた. また, 酸素化の評価から酸素化の悪化・改善を推測しており, 医学的な知識に基づく体位管理の判断をしていたと考える. しかし, これらの判断は, ICU看護師個々人の看護実践能力に依拠した可能性があり, 体位管理の適切な判断のためには, ARDSの病態や体位管理の知識・技術の強化を図る必要性が示唆された. 本研究のICU看護師は, ARDS患者の安楽性を考慮して, 患者の訴えや表情を重視しつつ, 客観的情報を含めた苦痛の多角的な評価をしていたと考える. また, 体位管理の安全性の確保に向けて, 鎮痛や鎮静, インフォームドコンセントの必要性を捉えていたが, ICU看護師がARDS患者の体位管理の安楽性や安全性を適切に評価するには, ARDS患者の全人的苦痛の理解と鎮痛鎮静の調整, 患者へのICの重要性が示唆された. さらに, 本研究のICU看護師は, ARDS患者の呼吸器合併症や医療事故の予防, 安全を重視した体位管理の判断をしていた. しかし, 体位管理の安全の確保において, 医師との協働や, 医師以外の医療専門職者との連携が図れていない可能性があり, 多職種連携を推進する必要性が示唆された.