[O10-1] イレウス解除術後感染創・瘻孔によりQOL低下をきたしたがん患者への看護 創傷ケアからQOL維持を考える
【目的】創傷管理への関心が集中してしまい患者の活動や睡眠を阻害することなどに至った事例を経験した。日常生活維持を重視した創傷管理方法を検討し実践した結果、患者の日常生活のあり方を改善し創傷治癒促進に繋がったことから創傷管理の看護実践を振りQOL維持を考慮した看護のあり方について今後の看護の示唆を得る。【方法】事例紹介:A氏 進行性胃癌に対して外科的に切除術施行。約1年半後にイレウスのため入院され、保存的治療の効果なくイレウス解除術施行されICU入室。ADLは自立されており物静かな、寡黙な性格であった。キーパーソンは妻。方法:事例研究。看護記録・医師記録から患者の意向・苦痛緩和・QOLの維持に重きを置いた看護介入を分析し考察する。倫理的配慮:A病院倫理審査委員会の承認を得た。患者は死去されており妻へ往復はがきにて研究参加を依頼しインフォームドアセントを行った。【結果】術後5時間後より正中創から便汁様の浸出あり、創部の離開も認めたため腹部CTを施行。皮下筋層部縫合不全及び膿瘍形成疑いが明らかとなった。医師は一時的な創部の持続的洗浄を開始したが汚染が強く効果的な洗浄効果は得られず、24時間持続的な洗浄へ変更とした。創感染拡大の回避・治癒のための創傷管理を継続していく一方で、ガーゼへの浸出が増加し寝衣汚染・更衣も頻回となり不快感の増強や夜間不眠につながり、日中も含め寝返りなど日常生活動作が阻害されている現状にあった。問題を≪浸出液管理が困難な現状の創傷管理方法の継続が疼痛や不眠、不快感がストレスを増強させ、活動耐性低下、回復意欲の低下、回復の見通しへの不確かさをもたらしQOLを低下させている≫と捉え、主治医と改めて創傷管理方法の再検討を行った。主治医は感染コントロールを優先させるため現状維持はやむを得ないとの見解であり問題解決のための新たな創傷管理方法を見いだせずにいた。ICU看護スタッフはその人らしさの擁護、安心安全な日常生活と回復意欲の保持が患者の尊厳の尊重という意味でも重要であると共有し、水準の高い創傷管理ケアを提供できる皮膚・排泄ケア認定看護師をリソースとして依頼した。既成の排液ドレナージバック使用は困難であり創全体をポリウレタンフィルムで保護し洗浄・吸引用のカテーテルをそれぞれ独立した状態で密閉し、創内持続陰圧洗浄療法を開始。消化液残渣による閉塞回避のため吸引カテーテルのサイズを上げ、確実な陰圧管理のためポリウレタンフィルム貼付部位の平面を確保するなど細部にわたる工夫を実施した。結果、効果的に浸出液が誘導でき4時間程度の睡眠時間の確保に繋げられた。その後、既成の排液ドレナージパックを使用できるようになり更に効果的に持続吸引が行え、術後11日目には薬剤に頼ることなく夜間睡眠が継続でき、15日目には術後初めて端坐位をとることができた。A氏の表情にも笑顔がみられリハビリテーションに意欲的に取り組むように変化していった。【考察】術後からの創部洗浄法は、創傷管理としてその目的を達成する意味では効果的であったが、一方でA氏のQOL低下に影響していたことは明確であった。創傷管理により日常生活を低下させていることを問題として捉え、多職種が連携しチームとして介入し身体的側面だけではなく全人的に患者を捉たことでニーズに合ったケアに繋げることができた。創内持続陰圧洗浄療法は創傷管理に効果的であるといわれておりその中でも工夫できたことはQOL維持には効果的であったと考える。全身管理や局所管理を行う上で患者の日常生活やその人らしさ、QOLをも考慮した創傷ケアの検討が重要であり、かつ今後の課題であるといえる。