第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O10群
創傷ケア・口腔ケア

2018年7月1日(日) 13:40 〜 14:30 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:小澤 美津子(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院), 座長:有澤 文孝(地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター・東千葉メディカルセンター)

[O10-3] 小児心臓血管外科患者の褥瘡発生に関する危険因子・看護ケアの検討

加覧 妙子 (鹿児島大学病院ICU)

【はじめに】重度の先天性心疾患をもつ1歳未満の心臓血管外科術後患者の多くは、急性期で循環動態が不十分な状況にある。そのため、人工呼吸管理や循環管理を要し、鎮静薬の投与は必須であり、体動が制限される。またバイタルサインの変動や浮腫を併発する患者も多く褥瘡発生の危険性が高い状況下にある。褥瘡予防対策は、全入室患者に体圧分散マットを使用し、スキンケアや体位変換、除圧などのケアを行っているが、現在の対策だけでは褥瘡発生を低下させるのは困難と考えた。褥瘡発生の要因は多様であり、統一的なアセスメントや、個々の患者に合わせた褥瘡対策が十分に行われていないことが褥瘡発生率低下にいたらない理由の一つと考えた。そこで、ブレーデンQスケールを参考に褥瘡発生危険因子を抽出し、小児心臓血管外科患者の特殊性を踏まえた看護ケアについて検討した。【目的】小児心臓血管外科患者の褥瘡発生因子を明らかにし、今後の褥瘡予防ケアへの活用について検討する。【方法】対象者:平成26年4月1日~平成29年7 月31日にA病院ICUに入室した5歳以下の小児心臓血管外科患者284名調査期間:平成26年4月1日~平成29年7月31日分析方法:ブレーデンQスケールの評価項目を基準に、独自に褥瘡発生危険因子の32項目を挙げた。褥瘡発生危険因子と褥瘡発生の関連性をχ2検定あるいは独立したサンプルのt検定、多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。有意水準はp<0.05とした。褥瘡の状況、ケア方法を診療録から抽出した。【倫理的配慮】A病院ホームページ上に本研究の実施を公開し、研究対象者またはその代諾者が研究の対象になることを拒否できる機会を保障した。研究データ、結果の公開については個人情報を保護するため、データはセキュリティロックの機能のある電子媒体に保存し管理した。また、所属施設の看護研究倫理審査委員会で承認を得た。【結果】対象患者は284名(男児155名、女児129名)であり、平均月齢は8.8(±8.9)、平均体重は6.73kg(±2.54)であった。そのうち褥瘡発生患者は14名、褥瘡発生部位は14名中13名後頭部に発生している。χ2分析・t検定では、体重p=0.026 手術時間p=0.032 術中心肺使用時間p=0.01再手術p=0.014 PCPS・ECMO p=0.014 CHDF使用p=0.001 術後未閉胸p=0.005 入室期間p=0.024 アドレナリン投与p<0.001 コアテック投与p=0.009 鎮静剤2剤以上使用p=0.019 筋弛緩薬使用p=0.003 人工呼吸器使用日数p=0.032 体位変換禁止p=0.003 抑制の使用p=0.007 腋窩温p=0.009 以上の16項目に有意差がみられた。多重ロジスティック回帰分析では、ボスミン投与p=0.039 オッズ比46.9倍(1.2-1824)であった。褥瘡予防のケアとして、除圧・耐圧分散マット使用を行っていた。【考察】褥瘡発生に有意な因子として「アドレナリン投与」が抽出され、組織還流の低下につながり、薬剤の機序を理解した観察や組織還流改善するためのケアを検討していく必要がある。鎮静剤や筋弛緩剤を投与する循環動態が不安定な患児は、体位変換が禁止されている場合がほとんどであり、観察もできない状況にある。予防的に除圧を行っていたが、看護師個々の判断で行われており、方法や時間が統一されておらず有効な除圧ではなかったことが示唆される。褥瘡好発部位である後頭部が耐圧分散マットと点として接しているため、頭部が大きい小児では褥瘡発生リスクが高い状況であった。小児におけるマットの検討も必要である。【結語】小児心臓血管外科術後の褥瘡発生予防として、組織還流を促すケアが必要である。また除圧の方法やマットの選択などの検討が必要である。