[O2-4] TAVIを受ける高齢AS患者の事例を通した看護支援に関する実践報告
【はじめに】 A病院では、2017年2月に経カテーテル的大動脈弁留置術(以下TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)を導入し、院内の多職種におけるハートチームを結成した。TAVIの適応は、高齢で併存疾患があり、開胸術での弁置換が不能な重症大動脈弁狭窄症(以下AS:Aortic Stenosis)患者である。TAVIは、低侵襲なため術後の早期離床や早期リハビリテーションにより、予定入院期間を短く設定することできる。 しかし、TAVIを受ける高齢AS患者や家族にとって不安が高まる要素がある。それは術後合併症や重症化のリスク以外にも、TAVIが実施できる設備のある病院への転院や紹介が必要なことや、ASは自覚症状がでにくい為、高齢患者で医学的な理解が困難な場合は、患者と医師が考える予後のリスクに差があり判断が異なることである。以上のことから、私はハートチームに参加し、モデルケースとして調整看護師の活動を開始した。今回は、私が経験した事例を通して、TAVIを受ける高齢AS患者と家族への継続した看護支援の強化に向けた実践を報告する。【目的】 A病院でTAVIを受ける高齢AS患者への看護支援に関する今後の課題や活動方針を明らかにする。【方法】 本報告は、事例を振り返り看護支援について考察を深めるものである。倫理的配慮は、患者と家族が特定可能な情報を記載しないことや、情報は本研究以外では使用しないことを患者と家族へ口頭で説明し承諾を得た。また、患者の入院施設の臨床研究実施規則に基づき倫理的配慮を行なった。1.事例 患者は80歳代の女性。歩行中に著明な呼吸困難を伴う重症なAS(NYHA 3)であった。以前に僧帽弁置換術を施行し、かかりつけの病院で経過をみていたが、症状の悪化と肺機能の低下もありTAVI目的でA病院の外来を紹介受診した。TAVI施行後、後腹膜出血および急性腎障害を発症したが、1時的に血液透析療法を行い順調に回復し退院した。退院後の患者は息切れなど症状なく生活し、TAVIを受けて良かったと満足されている。 2.看護活動 私はTAVIを受ける高齢AS患者とスタッフの安全と安心の担保を目指し、入院前の外来や、術前後の病棟、手術室、集中治療室など、患者が移動する療養の場で患者の話を傾聴した。その際、患者や家族とともに目標を設定した。また、必要に応じて相談を受け各部署の関連スタッフと共有しカンファレンスを実施した。活動の主な意図は、各療養の場で1人の調整看護師が患者と家族の話を傾聴し関係性を構築させ、安心の定着に努めることや、患者と家族がTAVIの治療を選択したことを意味づけし、患者の将来に向けた最善な支援をスタッフ間で検討することであった。【結果・考察】 調整看護師は、患者と家族の話を傾聴し「退院後に遠方で暮らす親戚に会いに行く」という目標を設定した。更にハートチームおよび関連スタッフと情報共有を行い、部署間で切れ目のない看護支援を実施した。その結果、患者と家族は各療養の場で穏やかに過ごし、安心できる入院生活だったと語られた。しかし、調整看護師の活動成果を具体的に評価し提示するまでには至らなかった。 今後、検討しなければならない課題は複数あるが、始めに取り組むべきことは、A病院でTAVIを受ける高齢AS患者への意思決定支援であると考える。活動方針は、現在のモデルケースにおける調整看護師の活動を、将来的には院内に在籍する認定や専門看護師を中心としたシステムによる活動が望ましいと考える。更に先では、看護支援の対象や視野を拡大させ、心不全患者の緩和ケアに関する組織作りを検討していきたいと考えている。