第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O2群
看護実践・管理

Sat. Jun 30, 2018 2:30 PM - 3:30 PM 第5会場 (2階 平安)

座長:樅山 定美(いわき明星大学 看護学部), 座長:山崎 早苗(東海大学医学部付属病院 集中治療室)

[O2-5] 患者の急変予兆を捉えた熟練看護師の臨床判断

原口 弘章, 杉崎 一美 (鈴鹿中央総合病院)

【目的】入院中に心停止を起こす患者の多くはその8時間前までに症状増悪兆候を示すといわれている。その予兆を察知し迅速に対応するためにRapid Response Systemと呼ばれる院内救急対応システムを導入している病院もある。実際、熟練看護師が軽微な状態悪化のサインを捉え急変予兆を早期に察知し対処している場面がある。本研究の目的は、患者の急変予兆を事前に察知した熟練看護師がどのように異常を察知し懸念を抱いたのか、その時どのような臨床判断がなされたかを明らかにすることである。
【方法】質的帰納的記述的研究デザイン。データ収集期間は2016年10月~11月。研究対象者は、A県内400床以上、二次・三次救急指定の3総合病院に勤務する看護師経験5年以上かつ循環器病棟勤務5年以上かつ現在も循環器病棟に勤務している看護師。調査内容は、患者の急変の予兆を事前に察知した際、どのような事象を捉えることで察知したのか、その時どのような臨床判断がなされたか、インタビューガイドに基づき半構造化面接法を行った。分析方法は、Berelson, B.の内容分析の手法を参考に、逐語録をコード化し、コードの類似性に基づき分類しサブカテゴリーを作成した。さらにサブカテゴリーの類似性に基づきカテゴリー、コアカテゴリーとした。倫理的配慮として、本研究は四日市看護医療大学大学院倫理審査の承認(No.37)、および研究協力病院の倫理委員会による承諾を得て実施した。研究協力者に研究目的、方法、病院・個人が特定できないような配慮、プライバシーの保護について文書および口頭にて説明した。また、病院および個人が特定されるようなデータを全て削除し匿名性に努めた。
【結果】対象者は7名であった。看護師の臨床経験年数平均11.7年、循環器病棟経験年数平均7年であった。患者の急変の予兆を捉えた熟練看護師の臨床判断は、119の文脈単位から19のサブカテゴリーと11のカテゴリーが抽出され、さらに5つのコアカテゴリーが導かれた。以下コアカテゴリーは【】、サブカテゴリーは<>で示す。【異変の気づきから急変への懸念】では<事前に急変の可能性を予測><患者に現れた症状・変化から急変予兆を察知><新たな疾患への懸念と重症度予測>の3カテゴリー、【原因を探り推移を予測】では<詳細な状態把握のための確認><現状と今後を判断>の2カテゴリー、【急変に備えて応援要請のコーディネート】では<スタッフとの情報共有と役割分担><医師との情報共有>の2カテゴリー、【状態悪化予防のための処置・ケア・評価】では<病態・経験知を元に緊急度・重症度を判断><必要な処置とケアの判断><処置の効果の判断>の3カテゴリー、【患者の安寧・安楽】では<患者の不安を軽減するための対応の判断>の1カテゴリーであった。
【考察】患者の急変予兆を捉えた熟練看護師は、患者に生命の危機状態の徴候が現れる以前から、今後の急変の可能性を予測していた。これは診断された疾患名や既往歴といった断片的な情報から患者の今後の推移を推し量り判断することで、急変予兆を察知するための準備性を高めていたと考えられる。また新たな疾患への懸念を抱くとともに患者の異常の原因と、その懸念が本当に正しいのかを判明させるべくバイタルサインのチェックや動脈血液ガス分析採血の必要性を判断するなど、状況判断を確実にするための観察の必要性を重視していた。同時に患者の精神面をアセスメントし患者の不安が緩和・軽減されるように働きかけていることが確認できた。さらに医療チームスタッフに報告・相談し意見を求める、緊急事態に備えて情報共有と役割分担について判断する特徴がみられた。