第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O3群
家族看護

2018年6月30日(土) 14:30 〜 15:20 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:榊 由里(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター), 座長:福田 和明(徳島文理大学保健福祉学部看護学科)

[O3-2] 集中治療室に緊急入室した意識障害のある患者への家族のケア参加に関わるエキスパートナースの看護実践

反保 沙由実1, 酒井 明子2 (1.福井大学医学部附属病院, 2.福井大学医学部看護学科)

【目的】
 ICUに緊急入室した意識障害のある患者の家族と関わるエキスパートナースは、家族を見て、何を感じ行為し、家族のケア参加を行っているのかを明らかにすること。
【方法】
 2017年2月から2017年4月の期間において、A県のICUで勤務し、ICUに緊急入室した意識障害のある患者の家族に家族のケア参加を実践したエキスパートナース9名を研究協力者とし、半構成的面接法によりデータを収集した。インタビューの内容は、「ICUに緊急入室した意識障害のある患者の家族と関わってからケア参加後までの家族の様子や状況、それについて思ったこと、とった行動」を中心に問いかけ、自由に語ってもらった。得られたデータから家族の状況に対するエキスパートナースの思考・行動ごとにカテゴリーを生成し、エキスパートナースの思考と行動の関係性を質的帰納的に分析した。
【倫理的配慮】
 A大学の医学系研究倫理審査委員会と研究協力者の所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した。研究協力者には研究目的と方法、自由意思による研究への協力、同意後の撤回の自由、個人情報の保護などを説明し、書面による同意を得た。
【結果・考察】
 家族のケア参加には、家族の心理過程に沿って、第1期(緊急入室時)、第2期(ケア参加前)、第3期(ケア参加時)、第4期(ケア参加後)という時間経過があり、家族の状況に対するエキスパートナースの思考は20カテゴリー、行動は20カテゴリー(以下【 】で示す)が生成された。そして、エキスパートナースの思考と行動の関係性から以下のことが明らかになった。
 エキスパートナースは、緊急入室時から【視線や素振りから家族の状況を捉える】、【関わるタイミングを待つ】ことで【突然の患者の変化にパニック】である家族の様子を捉えていた。ケア参加前には、家族が【一人で抱え込みすぎている】、【なにもできず見ているだけ】、【張り詰めた状態で無理をしている】中でも、【声をかけるように変化】することや、【患者に触れることに躊躇がない】、【片時も離れず側にいる】様子から【なにか自分にできることを探している】こと、【置いていかれている感じ】があり、【患者との距離が離れていく】という家族の微妙な変化を捉え、家族のケア参加に繋げていたことが明らかになった。また、ケア参加時には家族の【反応を見ながら一緒に行う】、ケア参加後には患者に【接する様子を見守る】ことを行い、緊急入室時からケア参加後までの時間経過の中で、ただ現実に翻弄されるだけでなく、揺れ動きながらも現実に対処し続ける家族の状況をそのつど捉えていた。そして、エキスパートナースは、家族には緊急入室時から【患者との過去での関わりからの後悔や責任】があり、【ケア参加により患者との過去を振り返る】ことで【思いの整理に繋がるケア参加の継続】をしており、さらに、【話せない患者との間を繋ぐ】、【できることがあると伝える】ことで、【今後の家族を支える思い出を作る】実践をしていたことが明らかになった。
 以上から、ICUに緊急入室した意識障害のある患者への家族のケア参加に関わるエキスパートナースの看護実践では、家族と関わる時間が短い中でも、目の前の家族が示す反応を早い段階で正確に捉え、微妙な変化を感じ取るという家族の状況をそのつど捉え直す俯瞰的な視点を持つこと、さらに患者と家族の関係性から過去だけでなく、今後の家族を想像し援助するという過去から未来までを見据えた俯瞰的な視点で今後の家族を支える思い出を作り、家族自身が患者の死に適応していく悲嘆作業の援助も視野に入れ、家族のケア参加を行っていくことが重要であると示唆された。