第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

一般演題(口演) O3群
家族看護

Sat. Jun 30, 2018 2:30 PM - 3:20 PM 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:榊 由里(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター), 座長:福田 和明(徳島文理大学保健福祉学部看護学科)

[O3-4] ICUにおける終末期にある患者・家族の情報共有を目指して

古田 大 (東京医科大学茨城医療センター)

【目的】ICUは救命の場であるという認識や環境、時間的制約があるため、患者・家族からの情報収集が困難な場合がある。A病院ICUでは、デスカンファレンス内で、患者・家族に関する情報収集の不足により意向に沿った支援が困難という課題が抽出された。そこで、随時適切な情報収集ができ、終末期にある患者・家族対応が円滑に行うことができるように情報共有用紙を使用した。今回、情報共有用紙の有用性を明らかにするため研究に取り組んだ。【方法】2017年8月~12月に在室した終末期にある患者・家族に対して情報共有用紙を使用。その後ICU看護師25名に、情報共有用紙についてのアンケートとデスカンファレンスの意見を集計・検討した。本研究は院内倫理委員会で承認を受け、対象者の同意を得て実施した。【結果】情報共有用紙を使用した患者・家族は6名であり、その中で患者・家族に関わることができた看護師は全体の72%であった。情報共有用紙についてのアンケートより「情報共有用紙内で活用できた項目(複数回答可)」は「本人・家族の希望」72%、「面会中の家族の言動/行動・家族の身体/精神面の変化」39%、「DNAR取得に至った経緯」33%の順で多く、「活用できなかった項目(複数回答可)」は「キーパーソンには頼れる人がいるか」22%、「家族間でのコミュニケーション状況」17%であった。「患者・家族からの情報収集に変化が見られたか」では、「はい」61%、理由は「家族対応の経緯が分かるので重複した情報収集をしなくなった」「積極的にコミュニケーションをとり情報収集しようという気持ちになった」であった。「いいえ」28%、理由は「在室期間が短く上手く活用できなかった」「使用する機会が少なかった」であった。「情報共有を図ることができたか」では、「はい」67%、理由は「効率的に情報を得られ共有が図れた」「対応中のことや家族の心理的変化を経時的に知ることができた」「過去のカルテ記載内容を探さなくても一覧で見やすい」であった。「いいえ」11%、理由は「使用頻度が少なかった」であった。「看護に繋げることができたか」では、「はい」66%、理由は「どのような関わりやアプローチが必要なのかわかった」「家族の意向を共有し希望に沿った看護ができた」であった。「いいえ」17%、理由は「対応した内容が用紙のみに記入されているため記録として残ると良い」「研究期間が短く評価ができない」であった。デスカンファレンスで聴取した意見より「家族と積極的にコミュニケーションを図るきっかけになった」「DNARの患者・家族の関わり方は難しいと感じるため、家族の気持ちやどのような希望があるのか書面で共有できるのはとても良い」であった。【考察】今回、終末期にある患者・家族対応に必要な情報を収集するための項目を、情報共有用紙に設けたことで、積極的かつ効率的に情報を得ることができたと考える。また、患者や家族の心理的変化や対応について経時的に集約されていたため、情報共有用紙を使用する前より情報共有が図りやすくなったと考える。これらのことから終末期にある家族対応を円滑に行うために、情報共有用紙は有用であったと言える。一方で、情報共有用紙内で活用できない項目があったのは、家族に関わる時間に限界がある中で、精神的に混乱している家族に対してどこまで踏み込んでよいか分からず、情報収集や介入を躊躇してしまうことが要因と考えられる。その様な環境の中でも必要な情報収集を行っていくためには個々のコミュニケーション能力を向上する必要があると考える。