第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O4群
エンドオブライフ

2018年6月30日(土) 15:40 〜 16:40 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:秋元 典子(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部), 座長:杉野 由起子(熊本中央病院)

[O4-2] 救急外来看護師が行う悲嘆ケアの実態調査 第1報 ケア実施状況の実態

岡林 志穂1, 井上 正隆2, 佃 雅美2, 森本 紗磨美2, 西塔 依久美3, 大川 宣容2 (1.高知医療センター, 2.高知県立大学, 3.東京医科大学看護学科)

【目的】クリティカルケアにおける悲嘆ケアガイドラインの開発を最終目的に救急外来看護師が行う悲嘆ケアの実態調査をおこなった。本研究は、悲嘆ケアがどのように行われているのか実態を明らかにすることを目的にした。
【方法】岡林が行った救急外来看護師が行う悲嘆ケアに関する質的研究及び先行研究を基に、看護師の属性11項目、悲嘆ケアの実施状況32項目、看護師の内省6項目の質問紙を作成した。回答方法は、「全くあてはまらない」を1点「とてもあてはまる」を7点とする7段階の尺度とした。救命救急センターを標榜する病院全284施設の看護責任者宛に依頼文書を送付し、研究協力の可否と質問紙送付部数を確認し、最終的に92施設に1392枚の質問紙を配布した。673件を直接郵送法で回収し、有効な回答が得られた669件を分析に用いた。統計分析は、悲嘆ケアの実施状況32項目を内容に即して治療期のケア、臨終期のケア、その後のケアに分け分析した。看護師の内省と各ブロックそれぞれの得点を合計し理論上の満点で割った実施率を求めた。有意水準は、0.05を用いた。研究実施に際し、所属大学の研究倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】看護師経験年数は15.4±7.5年、救急経験年数は8.0±11.9年であった。悲嘆ケアの実施状況の項目は、全て天井効果とフロア効果が無く、全平均は4.5±1.4であった。最も得点の高い質問項目は、「患者の外観や周囲の環境を整える」(6.3 ±0.9)で、最も低い質問項目は、「電話訪問により遺族のその後の反応を確認する」(1.6±1.3)であった。
ブロック間の実施率の比較では、治療期のケア(75.7±11.1)と臨終期のケア(76.8±12.5)が最も高く、両者に有意な差はなかった。その後のケアは最も実施率が低く(39.2±17.7)、標準偏差は逆に最も高かった。また、看護師の内省(67.5±14.0)は、治療期のケアと臨終期のケアより実施率は低く、標準偏差は高かった。ブロック間の実施率の関係は、全ての組み合わせで有意な相関関係を認めた。最も高い相関関係は、治療期のケアと臨終期のケアであった(r=0.71, p<0.001)。
ケアの関連性を明らかにするために、各質問項目間の関連性を相関分析で確認すると、「家族が十分に悲しみを表現できているかを確認する」が22項目の質問項目と有意な相関があり、最も他の質問項目と関係性を持っていた。また、この質問項目は各ブロック合計得点と有意な相関関係があった。他に同様の相関関係があった質問項目は、「エンゼルケアをしながら家族が患者の思い出を語れるようにする」、「個人的に他のスタッフとケア場面や体験を共有する」、「カンファレンスで、スタッフとともにかかわりを振り返る」の3つであった。この内2つの質問項目は、看護師の内省に属していた。
【考察】救急外来看護師が行う悲嘆ケアの中で患者の外観や周囲の環境を整えるケアが最も行われているケアであった。また、個々のケアは関連し合い、特に治療期のケアと臨終期のケアは強い関係性があった。その中で家族が十分に悲しみを表現できているかを確認することは、他のケアとの関係性が強く、悲嘆ケアの指標に近いものとして作用していることが示唆された。また看護師の悲嘆ケアを内省する行為は、ケアの実施状況を高める作用があることが示唆された。
本研究はJSPS科研費 16K159050001の助成を受けたものです。