第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O4群
エンドオブライフ

2018年6月30日(土) 15:40 〜 16:40 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:秋元 典子(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部), 座長:杉野 由起子(熊本中央病院)

[O4-4] 集中治療領域における終末期患者への緩和ケアに対する困難感

小島 朗1, 比田井 理恵2, 立野 淳子3, 中谷 美紀子4, 田山 聡子5, 藤本 理恵6, 山勢 博彰7 (1.大原綜合病院, 2.千葉県救急医療センター, 3.小倉記念病院, 4.東京純心大学看護学部, 5.慶應義塾大学病院, 6.山口大学医学部附属病院, 7.山口大学大学院)

【目的】本調査は、わが国の集中治療領域における終末期患者への緩和ケアに対する看護師が抱える困難感を明らかにすることである。尚、本調査は日本クリティカルケア看護学会終末期ケア検討ワーキンググループで行った調査の一部である。
【方法】
1.研究デザイン:質問紙を用いた実態調査
2.対象:全国病院リストからブロック層化ランダムサンプリング法を用いて抽出された集中治療領域398部署に勤務する終末期ケアに携わった経験のある、集中治療経験2年目以上の看護師1990名。
3.データ収集期間:平成28年3月から4月
4.調査内容:調査内容は、終末期患者への緩和ケア実施において困難と感じることを、自由記載で回答をしてもらった。
5.収集方法:質問紙は依頼文とともに対象病院看護部長宛てに郵送し、当該部署の管理者から対象看護師に配布を依頼した。回収は郵送法で看護師1人につき1つの返信用封筒に密封した上で返送を依頼した。
6.データ分析方法:質的帰納的分析
7.倫理的配慮:質問紙に、自由意思による参加、無記名、不参加による不利益がないことを明記した。本調査は日本クリティカルケア看護学会倫理委員会の承認を受けた。
【結果】
総回答数は435件(回答率21%)。回答者の平均年齢は35歳、集中治療領域での通算経験年数10年目以上が64%を占めており、所属は救命ICU、HCUが多かった。自由記載で得た回答を分析した結果、231コード、29カテゴリ、9テーマが抽出された。緩和ケアへの困難感についての9テーマは【クリティカルケア領域における終末期の判断】【医師・看護師・家族との意見の相違】【代理意思決定】【終末期・緩和ケアの具体的導入方法】【終末期ケアのタイミング判断】【緩和ケアの展開】【緩和ケアを行う時間的余裕の不足】【ICU環境に伴う家族ケアの限界】【緩和ケアに携わる機会の少なさと知識不足】であり、各テーマに関連して看護師は様々な困難感を示していた。クリティカルケア領域における終末期患者への緩和ケアにおいて、医師と看護師の意見の相違が多くあり「医師と看護師の思いの違い」や「医師と看護師、家族の考え方が異なるときの対応方法」が困難の1つとして挙げられていた。更に「鎮静・鎮痛により死期が早まると家族の受け入れができないまま亡くなることがある」や「薬物投与を開始するタイミング」において看護師は、薬物を使用したいが、いつから使用すれば患者の安楽が図れるのか悩み困難感を感じていた。そして、「あまり終末期患者がいないため戸惑う」ことや「終末期看護の実施の場が少なく、知識が不足している」など、救命を使命とするクリティカルケア領域であるがゆえに、患者が終末期に移行した際の対応に困難感を示していた。
【考察】
終末期患者への緩和ケアにおける看護師が抱える困難感は、医師、看護師、家族の意見の違いや薬剤の使用方法における見解の違いがあり、これに対しては「チーム医療の推進」を行っていく必要がある。また、緩和ケアを推進する上で看護師の経験不足や、環境の限界を感じているため、これに対しては知識や実践方法の教育や患者や家族への最善の看護ケアが行える体制を整える必要性があると考える。