第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

一般演題(口演) O5群
精神ケア

Sun. Jul 1, 2018 9:05 AM - 10:05 AM 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:染谷 泰子(帝京平成大学 健康メディカル学部), 座長:丹羽 由美子(愛知医科大学病院)

[O5-2] 緊急手術を伴う二度の手術を乗り越えた高齢患者の力と看護師の関わりについて

清水 真平, 中村 香代 (独立行政法人国立病院機構災害医療センター)

【はじめに】老年人口の著しい増加に伴い高齢者に対する治療の機会が増加しており、同時に手術件数も増加している。高齢者は加齢による身体機能・予備能力の低下や種々の併存基礎疾患を抱える特徴を有しており、ひとたび合併症が発生すると、連鎖的に重要臓器が機能不全に陥る危険性がある。また、手術患者は、その疾患の重症度や手術の内容に関わらず、ストレス状況下にあり、手術の成功、術後の経過、痛み、生活への影響など様々な不安を抱えている。それらの不安や恐怖は手術後の疼痛の程度や回復過程に大きく影響すると言われている。私が受け持ちを行ったA氏は高齢でありながら、緊急手術を伴う二度の手術を乗り越えることができた。そのことから、看護師の関わりが、手術を乗り越えた高齢患者の力にどのような影響を与えたのかを明らかにしたいと考えた。
【目的】救急看護に携わる看護師の関わりが、緊急手術を伴う二度の手術を乗り越えた患者の力にどのような影響を与えたのかを振り返る。
【倫理的配慮】災害医療センター看護部倫理審査委員会の承認を得た。
【患者紹介】A氏、80歳代で胃癌に対して幽門側胃切除術を施行されたのち一般病棟に戻られたが、術後脾動脈に仮性動脈瘤が発見され、緊急手術を受けた。
【結果】A氏は1回目の予定手術の際は、疼痛の訴えも少なく、治療にも積極的な様子が見られ、早期から離床を進めることが出来ていた。今回ICUに再入室した際、吐血し全身状態は不安定であったが、意識レベルの低下はなかったため、「大丈夫よ」と気丈に振る舞っていた。しかし、ICUでも再度吐血し、医師から緊急手術が必要であると説明を受けると「急にこんな事になって。大丈夫かな」と不安と緊張が入り交じった表情が見られた。そのため、看護師は緊急手術まで患者の言動や表情の変化に注意しながら、患者の不安を傾聴し、精神的な苦痛の軽減に努めた。緊急手術後、1回目の手術とは異なり、帰室時から「痛い、痛い早くなんとかしてよ」、「体も凄く熱い」と強い口調で話された。そのため、看護師は出来だけ患者の近くで訴えに耳を傾け、鎮静剤の使用やクリーングを実施した。朝方になり、痛みと体熱感が落ち着くと「1回目より痛みが強くてびっくりした。昨日はごめんなさいね。助かりました。」との発言が聞かれた。その後、術後訪問にて、ICUの看護師の対応について質問すると「みなさん凄く良くしてくれて、痛み止めや氷枕を準備してもらって助かりました。話しも聞いてもらえて良かったです。」との返答が聞かれた。また、緊急手術から現在までを振り返ってみての思いを質問すると「最初は不安もあったけど、今は前向きに考えようと思っていて、早く退院できるよう頑張っています。」との発言が聞かれた。
【考察】アギュララは危機に遭遇した人が、危機を回避するか、危機に陥るかは出来事の知覚、社会的支援、対処機制など問題解決を決定づける要因によって左右されると述べている。A氏は緊急手術に対し、不安を感じながらも、現実の出来事として正しく知覚することができており、高齢であるA氏の人生経験の多さが問題解決に繋がったと考えられる。さらに、看護師が手術前後から親身になって関わったことが、患者の身体的・精神的な支えとなり、緊急手術を乗り越え、退院に向けた前向きな行動に繋がったのではないかと考えられる。しかし、高齢者の誰しもが同様の経過をたどるわけではなく、患者一人一人が異なった性格や考えを持っているため、今後の課題として、性別・家族背景・ニードなどを考慮した個別性のある介入が必要である。