第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O5群
精神ケア

Sun. Jul 1, 2018 9:05 AM - 10:05 AM 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:染谷 泰子(帝京平成大学 健康メディカル学部), 座長:丹羽 由美子(愛知医科大学病院)

[O5-5] 除細動器付き植込み型心臓デバイスの新規植込み術を受けた患者が社会復帰に向けて抱く不確かさ

鶴見 幸代, 中村 美鈴 (自治医科大学大学院看護学研究科)

【目的】除細動器付き植込み型心臓デバイスの植込み患者は、今後の生命や社会復帰への不確かさを抱いていると考えられる。患者が心身ともに良好な状態で社会復帰を果たすには、社会復帰に向けた不確かさの把握とそれに伴う看護実践や生活指導の充実が必要であり、これらの確立が急務であると考える。そのため、除細動器付き植込み型心臓デバイスの新規植込み術を受けた患者が退院前に抱く社会復帰への不確かさを明らかにし、その不確かさに対する今後の看護実践や生活指導への示唆を得ることを本研究の目的とした。【方法】研究対象者は、デバイスの新規植込み術を受けた30歳以上の成人期以降で退院後に入院前と同様の社会復帰を予定している患者とした。患者属性は、患者の許可を得て電子カルテから情報を得た。データ収集内容は、インタビューガイドを用いた半構成的面接法でデータを得た。得られたデータを、患者の発した言葉を構造的にとらえ、前後の文脈を重視して不確かさを明らかにするKrippendorffの内容分析の方法を参考に質的帰納的に個別分析と全体分析を行った。倫理的配慮は、研究対象施設の臨床研究等倫理審査委員会の承認を得た。対象者には、研究趣旨や参加の自由意思、個人情報の保護などを、文書と口頭で説明し同意を得た。【結果】研究対象者は8名であった。患者が抱く不確かさは、【予測できない死や不整脈への恐怖がある】、【心臓やデバイスに影響のない生活スタイルへの変更ができるのだろうか】、【デバイスを植込んだ後の生活のイメージがわかない】、【変容した自己イメージの受容ができるのだろうか】、【デバイスへの電磁波の影響が気がかりである】、【入院前と同様の就労体制に復帰できるのだろうか】、【自動車の運転ができなくなるため移動手段が確保できるのだろうか】、【高額の医療や就労スタイルの変更に伴う金銭面の気がかりがある】、【生活/就労スタイルの変更に伴うソーシャルサポートへの気がかりがある】、【社会復帰後の生活での人との関わりが気がかりである】の10のカテゴリーが明らかになった。【考察】不確かさには、漠然とした生活への不確かさと具体的な生活への不確かさがあり、その両方の不確かさの根底には【予測できない死や不整脈への恐怖がある】という不確かさがあることが考えられた。また、Mishel(1988)の不確かさの理論より、不確かさの要因には、疾患やデバイス、退院後の社会生活に関連した知識や情報の不足が関連していると考えられた。そのため、理解度に合わせた様々な知識や情報提供を行い、不確かさをポジティブにとらえて対処し、適応できるような看護実践が必要であることが示唆された。【結論】1.社会復帰に向けて抱く不確かさは、【予測できない不整脈や死への恐怖がある】などを含む10の不確かさであった。2.不確かさを抱く要因は、新規でデバイスを植込んだ患者特有の、退院後のデバイスとともに送る社会生活が未経験であることが考えられた。また、デバイスや致死性不整脈などの治療や疾患が複雑であり入院期間が短期間であることなどから、治療や疾患についての理解や情報収集が不十分であり出来事の意味を見出せていないことも要因であると考えられた。3.不確かさに対する入院中の看護実践や生活指導は、患者の情報処理能力や理解力を把握した信頼できる医療者からの、疾患や治療に関する正確な知識の提供と、退院後の社会復帰に向けてのソーシャルサポートを含めた情報提供が必要であることが示唆された。また、患者が不確かさをポジティブにとらえて対処し、不確かさに適応できるような看護実践と生活指導が必要であることが示唆された。