第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O5群
精神ケア

Sun. Jul 1, 2018 9:05 AM - 10:05 AM 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:染谷 泰子(帝京平成大学 健康メディカル学部), 座長:丹羽 由美子(愛知医科大学病院)

[O5-6] 人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動

大崎 杏奈1, 大川 宣容2 (1.日本赤十字社高知赤十字病院, 2.高知県立大学看護学部)

【目的】本研究は、人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動を明らかにすることにより、クリティカルな状況にある人工呼吸器装着患者に対する相互作用を基盤とした看護実践への示唆を得ることが目的である。なお、本研究における人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動は、ICU看護師が、人工呼吸器装着患者から表出される多様で変化を伴う反応を敏感に察知し、相互作用の中で人工呼吸器装着患者に対する理解を深めながら、ニーズを引き出し応答し、さらに患者から得られた反応を次のケアに繋げる一連の行為と定義した。
【方法】本研究は質的記述的研究デザインを用い、A県内の2箇所の急性期病院で、臨床経験5年以上、ICU経験3年以上の看護師5名を対象に、半構成的面接を行った。人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動の内容をコード化し、ケースを越えて意味内容の類似するものを集めてカテゴリー化を繰り返し抽象化した。さらに分析をすすめ人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動の本質的要素を抽出した。研究は所属大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】研究協力者は、A県内の2施設のICUで勤務する看護師5名であった。ICU経験年数は平均8年であり、臨床経験年数は平均12年であった。人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動として、7つのカテゴリーと19のサブカテゴリー、3つの側面が見いだされた。以下、側面は[]、カテゴリーは【】、サブカテゴリ―は≪≫で示す。[意思を徹底的に汲み取る]では【わずかな変化を意味づけながら体験を理解する】や【積極的に関与しニーズを感知する】が抽出され、≪微細な反応を注視し訴えを掴む≫、≪ケアを通してニーズを察知する≫等が含まれた。[安心の感覚をもたらす]では【やりとりし続けることにより動揺を鎮める】や【関心を向けてくれる人々の存在を示す】が抽出され、≪記憶の保持が困難な患者に繰り返し関わる≫、≪繊細な状況にある患者に応答し続ける≫等が含まれた。[主体的な力を後押しする]では【回復に向け前進する力を支える】【過剰な負担から患者を護る】【力を合わせケアの効果を生み出す】が抽出され、≪主体的に取り組める部分を増やす≫、≪必要性を検討しケアの調整を図る≫、≪他職種が介入するタイミングで効果的にケアを行う≫等が含まれた。
【考察】ICU看護師は[意思を徹底的に汲み取る]ことを基盤としながら、[安心の感覚をもたらす]ことや、[主体的な力を後押しする]ことにより人工呼吸器装着患者の存在そのものに関心をもち、わずかな変化を捉えながら応答し続けていた。ICU看護師がただ一方的に[主体的な力を後押しする]のではなく、患者の[意思を徹底的に汲み取(る)]り、それを反映させることや、人工呼吸器装着患者の脆弱性に配慮し、[安心の感覚をもたら(す)]しながら、[主体的な力を後押しする]ことが患者の存在そのものを支え関係性を深めていくと考えられた。結論として、人工呼吸器装着患者に対するICU看護師のケアリング行動とは、ICU看護師が人工呼吸器装着患者の変化を捉え、意思を徹底的に汲み取ることを基盤としながら安心の感覚をもたらすことや、主体的な力を後押しすることを通して人工呼吸器装着患者の存在そのものを尊重し、関係性が深まっていくものである。