第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O6群
看護教育

2018年7月1日(日) 10:15 〜 11:15 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:平尾 明美(神戸大学医学部附属病院), 座長:河合 正成(敦賀市立看護大学 看護学部看護学科)

[O6-2] 計画外抜管からの学びと今後の課題

日下 沙紀, 佐藤 奈緒子, 本間 隆子 (日本私立学校振興・共済事業団東京臨海病院)

【目的】
気管チューブのトラブルとして計画外抜管は非常に緊急度が高く生命に危険を及ぼす可能性が高い。さらに再挿管は人工呼吸器装着期間の延長をきたすと言われており、結果的に集中治療室在院期間の延長となりかねない。今回私たちは計画外抜管を2件経験した。このアクシデント2件の要因を分析し集中治療室内における問題点を抽出し、今後の改善案を検討したためここに報告する。
【方法】
ImSAFERを用いて2件のアクシデントの分析を行い、今後の課題を明確にする。
【結果】
2件のアクシデントに共通する要因として、1.看護師の知識・学習不足、2.集中治療領域での看護師経験不足、3.リーダー看護師としての看護業務のマネジメント不足、4.処置や検査などの計画されている業務優先の環境という4項目が明確化された。
【考察】
1.の看護師の知識・学習が不足している内容については、鎮静スコアRichmond Agitation Sedation Scale、薬剤、気管内挿管中の看護、ICDSC、行動制限、倫理の6項目であった。知識を深めることを目的とし病棟内での学習会を開催しているが、シフト業務のなか全員参加での学習会開催は困難であり、効果的な学習方法ではなかった。また自己学習は各個人により方法や習得度に差があるため全員が一定レベルの内容を理解できていないと考える。
2.の集中治療領域での看護師経験不足については、当集中治療室では新人看護師、既卒を含め集中治療室における経験年数が3年以下の看護師が2/3を占めており経験知の浅い看護師が多く在籍している。そのため知識不足の解消は重要課題の1つである。また、集中治療室では多様な状況に対応する必要があり、臨床からの学びの価値は非常に大きい。今回のケースに限らず経験知の少ない看護師の危険予測が不十分なことからアクシデントが発生していると考えられる。本来であればチームで補完しあうことが理想だが、経験知の少ないチームでの業務となる時間帯もあり病棟看護師全体のレベルアップが急務と考える。
3.のリーダー看護師の看護業務のマネジメント不足については知識不足に加え、不十分なアセスメントによる判断や、不十分な観察下での行動制限解除から発生している。しかしこれは、患者の鎮静状態や行動制限に関してリーダー看護師と受け持ち看護師との間で情報やアセスメントが共有されていなかったことが重大なアクシデントを招いたと考えられる。リーダー看護師として患者の状態をもとにユニットマネジメント、業務遂行状況を把握することが必要でありマネジメント能力を高めることも重要な課題と考える。
4.処置や検査などの計画された業務優先の環境については 集中治療室という環境から患者の病態は常に変化しており、患者スケジュールに基づく看護業務だけでの対応では不十分である。患者の病態をアセスメントし必要な時に必要な看護ケアが提供されなければならない。今回のアクシデントに関しては、患者の状態よりも計画された業務が優先された結果であり、適切なアセスメントに基づいた看護ケアが実施されていれば回避できたアクシデントと考えられる。
【結語】
能力向上のための看護師教育において現状の体制では不充分なこと、安全管理の視点を強化するための環境調整の必要性が高いことから、1.看護提供方式についての検討,2.OJTの充実が重要課題である。