[O7-1] 人工心肺稼働下で心臓血管外科手術を受けた患者のICUでの離床時の体験
【目的】心臓疾患のために人工心肺を使用し心臓血管外科手術を受けた患者が,ICU滞在中の離床時にどのような体験をしているかについて明らかにすること【方法】1)研究デザイン:質的帰納的研究デザイン2)データ収集方法:以下の4つの条件を全て満たす患者を研究対象者とする(1)A大学医学部附属病院心臓血管外科において,人工心肺稼働下で心臓血管外科手術を受けた60歳以上80歳未満の患者(疾患名は限定しない),(2)ICU在室中に早期離床(用語の定義参照)ができ,ICU退室後,循環動態が安定(検温指示が3検以下)し,A大学医学部附属病院心臓血管外科病棟において療養中の患者,(3)認知機能に問題がなく,精神疾患の既往のない患者,(4)研究参加の同意が得られた患者.4)用語の定義,早期離床:日本離床研究会における定義を参考に「心臓血管外科手術後3病日までにICUにおいて端坐位または立位をとること」とする.4)倫理的配慮:研究実施に際しては,浜松医科大学臨床研究倫理委員会の承認を得た(E16-094)5)研究対象者の選定方法:データ収集フィールドの看護師長より紹介を受けた対象候補者に,研究協力依頼書を提示しながら研究目的およびデータ収集方法について説明し,研究参加の同意を得る.6)データ収集方法:研究者が作成した半構成的質問紙を用いて自由回答法による半構造化面接を実施し,研究対象者からの承認が得られた場合に限り,面接内容を録音する.加えて,対象者の診療記録と患者記録から術式等の情報を得る.7)分析方法:面接内容の逐語録を質的データとし,Krippendorff(2001)の内容分析の手法を用いて,個別分析,全体分析の2段階で分析を行い,分析にあたっては研究者間でディスカッションを行うとともに,質的研究の専門家のスーパーバイズを受けることで分析内容の信用性の確保に努める.【結果】10名の患者(男性8名,女性2名,平均年齢71.6歳)に面接を実施した.分析の結果,心臓疾患のために人工心肺を使用し心臓血管外科手術を受けた患者のICU滞在中の離床時の体験として,術後早期からのICUでの離床に対して戸惑う,手術により生きていられるという思いから,退院に向け強い思いで離床に臨む,看護師の離床援助により安心して離床が行なえる,離床よる心身への効果から,回復を実感するの4つのカテゴリーと,16個のサブカテゴリーが明らかになった.【考察】患者は侵襲度の高い手術を受け,多くのルート類や痛みのある中で術後早期から離床することにどう対処してよいか分からず,術後早期からのICUでの離床に対して戸惑うという体験を持つに至ったと考える.一方で,手術を乗り越えた安堵感から早期の回復を望み,手術により生きていられるという思いから,退院に向け強い思いで離床に臨むという体験に繋がったと考える.そして,離床を継続することで,背部痛の軽減や,徐々に離床の負荷が上がっていくことにより確かな回復の手ごたえを感じ,離床よる心身への効果から,回復を実感する体験に至ったと考える.患者が術後の苦痛感が残る中でも安心して離床に取り組めた要因には,看護師の離床への援助があり,そのことは患者に,看護師の離床援助により安心して離床が行なえるという体験をもたらしたと考える.人工心肺稼動下で心臓血管外科手術を受けた患者が,術後早期からのICUでの離床に対して戸惑うことなく離床に取り組めるよう,術後早期からの離床の必要性や離床がもたらす回復への効果について説明を繰り返し,患者が納得して離床に取り組めるような関わり必要性が示唆された.【結論】術後早期から離床の必要性や離床がもたらす回復への効果を説明し,患者が納得して離床に取り組めるような関わりの必要性が示唆された.