第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O7群
早期リハビリ

2018年7月1日(日) 11:25 〜 12:15 第4会場 (2階 福寿)

座長:小島 朗(大原綜合病院 看護部/HCU), 座長:谷島 雅子(自治医科大学附属病院 救命救急センター)

[O7-2] 開心術後、致死性不整脈が頻発した患者のリハビリテーションの一事例―看護師の役割についての考察―

木田 綾子 (一般財団法人竹田健康財団竹田綜合病院)

【目的】開心術後より致死性不整脈が頻回にみられている状態下での患者のリハビリテーション(以下リハビリとする)に関わった。この事例から、致死性不整脈が頻発するという高リスクな状態で安全にリハビリを行うためにどのような関わりが有効であったかを明らかにする。
【方法】入院カルテ、看護記録から看護師の関わりを抽出し、文献を用いて客観的に分析する。所属施設の倫理審査を受け、データは個人が特定できないよう配慮した。
【症例】A氏60歳代女性、冠動脈狭窄にて開心術施行。術後よりVT(Ventricular Tachycardia)が頻回にみられ、その都度除細動を使用。致死性不整脈に対する治療についてカテーテルアブレーション、ICD(Implantable Cardioverter Defibrillator)、ペースメーカー植え込み治療が検討された。不整脈に対する積極的治療を行うためには、術後より続いていた意識障害の改善が必要であり、致死性不整脈が頻発するという高リスクな状態下であるがリハビリを行う方針となった。
【結果】リハビリはヘッドアップから始まり、徐々に端坐位~立位、歩行練習を実施した。
リハビリ実施に対する関わりとして大きく分けて3つのことを行なった。
1.リハビリに関わる多職種間で連携を図った:多職種間で合同カンファレンスの開催、情報交換を実施。検査データや患者の状態からその日のリハビリ予定について話し合い、患者の状態や方針についての情報共有化を図った。
2.急変時に備えた環境・体制づくりをした:ベッドサイドでは常に除細動器、救急カートを設置。除細動使用のためのAEDパットは常に装着した状態とし、不整脈出現時に早期対応できる環境を整えた。医師もリハビリのステップアップ時は付添い、急変時はすぐに駆けつけられる体制をとった。
3.常に患者の状態の観察・モニター管理を行いアセスメントしながら関わった:看護師は常にベッドサイドでモニター管理、全身状態の観察を行い状態の変化の早期発見、対応ができるよう関わった。
A氏は致死性不整脈が頻発しているという高リスクな状態であったが、不整脈出現や急変などもなく安全にリハビリを実施することができた。リハビリ実施に伴う効果として、術後より意識障害の状態が続いていたが、徐々に覚醒傾向、声掛けに対する反応がみられるようになった。ADLではベッド上でほぼ四肢の自動運動がなく、一時寝たきりの状態であったが、介助で歩行ができるまで改善がみられた。
【考察】多職種間で患者の状態に関する様々な情報を共有、協議検討することは、患者のその日の状態に最も適したリハビリ計画が立案でき、患者へ大きな負担をかけることなく安全なリハビリ実施するということに繋がったと考えられる。その上で、日々の患者の状態の観察・アセスメントを通したリスク管理が重要であった。日々の状態の変化を観察すること、モニター管理をしながら心電図変化を確認していくことは、患者の状態把握、アセスメントをする上で重要である。それを踏まえた関わりにより患者への身体的負担を最小限としながら安全に効果的にリハビリを実施することに繋げられたと考えられる。また、本事例ではいつ急変や致死性不整脈が出現するかわからない高リスクな状況下でのリハビリであった。そのため急変、致死性不整脈出現などリスクを想定した環境・体制づくりは重要であり、安全な環境下でのリハビリ実施に繋げられたと考える。致死的不整脈が頻発する中で安全にリハビリを行うためには本事例においてこれらの関わりは有効であったと考える。