第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O8群
その他

2018年7月1日(日) 11:25 〜 12:15 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:加藤 弘美(千葉県救急医療センター), 座長:星 豪人(医療法人社団 筑波記念会 筑波記念病院 看護管理室)

[O8-2] 人工呼吸器装着患者の頭部拳上に関連する要因の検討~ICUと一般病棟の比較~

大西 まゆみ, 須郷 恵美 (東邦大学医療センター大橋病院)

【目的】 人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防において頭部挙上は重要とされている。当院における2015年の人工呼吸器装着患者の頭部拳上角度30度以上の実施率は、ICU・一般病棟共に50%であった。その中で頭部拳上を阻害する理由がなく頭部拳上角度が30度以下であるのがICUは20%、一般病棟は40%と差があったため、当院におけるICUと一般病棟での頭部拳上に関連要因を明らかにする事を目的とする。【方法】 対象者を一般病棟(A病棟)の看護師5名(2年目、6-9年目、10年目以上各1名、3-5年目2名)とICUの看護師4名(2年目、3-5年目、6-9年目、10年目以上各1名)とし、病棟看護師の臨床経験年数の分布と同様の分布で無作為に選出した。インタビューガイドを用い人工呼吸器装着患者の頭部拳上に関する知識やスキル、病棟の特色について半構成的面接を実施し許可を得て録音した。逐語録を作成、コード化、カテゴリー化し頭部拳上に関する要因を生成した。本研究は、対象施設倫理委員会の承認を得た上で実施した。研究対象者に口頭と文書を用いて研究の趣旨、目的、方法等を説明し、研究への協力の同意が得られた対象者から同意書にサインを得、同意書の提出は後日でもいい旨を伝えた。同意撤回書を同時に配布し、参加の同意後も途中で中断でき、かつそのことによる不利益は生じない事を説明した。また、インタビューの内容により対象者が不利益を被らないことを説明した。【結果】 頭部拳上に関連する要因として、ICUとA病棟それぞれ6つのカテゴリーを生成した。ICUでは〔ICUには角度がわかるベッドが少なく角度が正確に測れない〕〔頭部拳上が行えない理由は患者の要因である〕〔VAPや予防策に対しての知識はある〕〔頭部拳上は病棟内で意識し合っているため浸透している〕〔頭部拳上の根拠を理解し習慣化することが重要である〕〔VAP頭部挙上の理解をもっと深める必要性がある〕、A病棟では〔頭部挙上ができない患者は、状態不安定、体勢が崩れやすい、または本人の意志〕〔VAPやその予防の知識がある〕〔VAPの知識や人工呼吸器装着患者のケアを先輩から学んだ〕〔病棟の患者やスタッフの背景が頭部挙上に関連する〕〔人工呼吸器装着患者には頭部挙上を実施している〕〔情報共有は、複数の方法を用いる〕であった。【考察】 頭部拳上阻害要因として「患者の状態や病態」が両病棟で挙がり、患者側の要因が抽出され、ICUとA病棟で大きな違いはなかった。先行研究でも、ICUでの頭部挙上阻害要因は「患者の状態・治療規制」による因子が多いとされており今回の結果と相違はなかった。A病棟は一般病棟であるが人工呼吸器の稼働率が他の一般病棟に比べ高い事から、人工呼吸器に関しての看護に精通しているため、知識・技術不足に起因する要因はなく、ICUと同様、患者側の要因が抽出されたと考える。頭部挙上が実施されている要因として、両病棟からスタッフ同士の意識や関わりあいに関するカテゴリーが挙がったことから、先輩看護師によるOJT(On the job training)が充実していることが考えられる。このことから、看護師がVAP予防のケアに対する知識と技術を身につけていれば、病棟の場所により頭部拳上に関連する要因に差がないことが示唆された。