[O9-1] 心臓血管外科術後患者とその家族における継続的なせん妄ケアに対する看護師の認識と看護実践
【目的】心臓血管外科患者とその家族に対するせん妄ケアを充実させるための示唆を得るために、人や場を超えた継続的なせん妄ケアに対する病棟・ICU看護師の認識と看護実践を明らかにする。【方法】対象:心臓血管外科手術を実施している施設の病棟及びICUに勤務し、過去2年以内にせん妄状態と判断された患者とその家族への看護経験があり、研究参加の同意が得られた看護師。調査期間:2016年10月から11月までの2カ月とした。調査方法:半構成的質問紙を用いた面接調査。分析方法:質的帰納的分析方法。【倫理的配慮】大学及び対象施設の倫理審査委員会の承認を得て行った。対象者に、研究目的・方法・個人情報の保護などを文書と口頭で説明し同意を得た。面接調査は、個人の能力を査定するものではなく研究同意を撤回しても勤務査定には影響しないこと、対象者の勤務と生活に支障のない日時を設定した。【結果】研究対象者は、2施設の病棟・ICUに勤務する看護師12名(病棟6名、ICU6名)。せん妄ケアの継続看護に対する認識は、病棟・ICU共に11カテゴリーに分類された。以下カテゴリーを【】に示す。病棟・ICUの共通の現状は、【せん妄ケアを継続している実感の不足】【せん妄ケアに関する情報共有の不足】【病棟間の交流の場の不足】【療養の場によるケア方法の違い】などの継続看護の不足を示す4カテゴリーであった。また、せん妄ケアの継続看護にとって必要と感じていることは、【病棟間で共有すべき情報の多さ】【計画を活用することによるせん妄ケアの継続が必要】【療養過程で生じる患者の変化の理解が必要】【連携する体制づくりが必要】の4カテゴリーであった。病棟のみは、【病棟移動後は患者のせん妄評価が必要】【患者に関係する部署でのせん妄ケアに関する共通理解が必要】、ICUのみは、【ケアの継続による予後改善の期待】であった。看護実践は病棟が6カテゴリーに、ICUが7カテゴリーに分類された。病棟・ICUに共通していた看護実践は、【継続に必要な患者情報の収集】【活用できる情報源からの患者情報の収集】【継続に必要な患者情報の共有】【引き継がれた内容を評価・修正したケアの提供】の5カテゴリーであった。病棟のみは、【受け入れ体制の整備】【病棟看護師の場を超えた患者の支援】であり、ICUのみは、【せん妄発生を予測した患者観察】【家族への説明】であった。【考察】看護師は、病棟・ICU共に、療養の場によるケア方法の違いを認識し、引き継がれた内容を評価・修正しケアを提供していることが明らかとなった。それぞれの療養環境で提供するケア内容が異なることを両者が明確に認識したうえで、せん妄改善を目標に連携し協働することが専門職種間の継続看護を可能とする。さらに、せん妄ケアの充実を図るためには、病棟・ICU共に、療養過程で生じる患者の変化の理解が必要であるとも認識していた。他部署における患者の療養環境・治療内容と患者の心身の変化を理解することは、看護師の対象理解が深まり、患者に掛ける言葉の内容やかかわり方にも変化が生じる。看護師が療養の場を超えて支援することは、患者自身に体験を話す機会を与え、より患者の心身の術後回復過程に沿った・個別性のあるせん妄ケアに繋がると考えられる。