[O9-5] 定期開心術後のICU入室患者に鏡を使う事で伝わる情報と患者に与える影響
【目的】本研究は、集中治療室の患者に鏡を用いる事で伝わる情報、患者に与える影響を調査し、ICU患者の情報整理や状況理解の補助となるのか検討する事を目的とした。【方法】研究デザイン:介入研究。当院のICUに入室した予定手術の開心術術後患者を対象にプロトコル化した鏡を使った介入を実施し、介入終了後に質問票を用いて半構成面接調査を行った。また診療録より対象者に関する基本的情報(年齢、性別、疾患、ICU入室期間、入院期間、挿管期間、鎮静期間、せん妄発症人数、プロトコル実施率)を得た。得られた質的データはKJ法で分析し、数量データは単純集計(記述統計)した。データ収集期間は平成29年4月1日~6月7日であった。【倫理的配慮】本研究は研究実施施設の看護部倫理審査会の承認を得た。対象者へは文書を用いて、研究の趣旨、研究参加の有無により対象者が不利益を被らない事、匿名性の確保について説明し、文書で同意を得た。【結果】対象者は男性16名、女性5名の計21名、鏡を見たことを覚えていたのは20名(95%)であった。鏡を使って見て確認した事からは、【鏡に映った自分】、【自分の生死を確認】など4カテゴリーが抽出された。鏡を見て感じた事からは、【見えた事で理解が深まった】、【自分の予想との相違】など6カテゴリーが抽出された。鏡を見て考えたことからは、【外見の変化】、【挿入物の位置のわかりやすさ】、【自分の状況を想像】などの7カテゴリーが抽出された。鏡を見た印象は、良い印象、悪い印象、印象がない、に分類され、良い印象からは、【自身や挿入物が確認出来た】、【説明だけより理解しやすい】、【安堵する】など5カテゴリーが抽出された。悪い印象からは、【痛みでそれどころではなかった】など4カテゴリーが抽出された。印象がないからは、【事前に説明されていた】の1カテゴリーが抽出された。看護師から鏡を見せられて受けた説明と感じた事は、覚えている、あまり覚えていない、説明は受けたが記憶にない、覚えていない、に分類された。覚えているからは、【口腔ケアに利用するよう説明を受けた】、【手術後の状態の説明を受けた】など4カテゴリーが抽出された。あまり覚えていないからは、【挿入物の説明はあったかもしれない】、【整容に利用するよう勧められた気がする】など3カテゴリーが抽出された。説明を受けたが記憶にないからは、【鏡は見たが説明は記憶にない】など2カテゴリーが抽出された。覚えていないからは1カテゴリーが抽出された。【考察】【手術後の状態の説明を受けた】など、プロトコルで提示した鏡像の記憶が面接時まで保持されていた事実は、先行研究にあるように鏡による視覚情報が事実記憶の保持に有効である可能性を示唆している。また【説明だけより理解しやすい】ように、鏡を用いて説明することは、視覚・認知機能を補い、情報整理や状況理解に有益である可能性が示された。対象者は鏡を見て、自身の置かれた状況を捉えようと自発的な試みを行っており、【自身の生死を確認】、【自分の予想との相違】を分析することで回復意欲の強化に繋がったと考えられる。また鏡を見る事で【安堵する】感覚を抱いていたことは、鏡を見る行為自体が回復の意欲を高める援助となっていた。しかし、一方で【痛みでそれどころではなかった】などストレスの存在や、対象者の需要と一致しない場合は鏡を使用することが悪い印象を抱く場合もある。【結論】鏡を用いて説明する事は、視覚・認知機能を補い、情報整理や状況理解に有益である可能性がある。一方、対象者の心情に十分に配慮して使用する必要がある。