第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

一般演題(示説) P1群
その他

2018年6月30日(土) 14:40 〜 15:25 ポスター会場 (1階 展示ホール)

座長:桑村 直樹(公益社団法人日本看護協会 看護研修学校)

[P1-1] 気管切開術へ移行しなかった脊髄損傷患者の呼吸管理を通して-チーム医療において看護師に求められる能力-

古村 康樹, 三浦 敦子, 上野 厚子, 馬渡 敬介, 岡田 裕也 (豊橋市民病院)

【目的】
 患者が人工呼吸器から離脱できるかどうかは、患者や家族のQOLを左右する大きな問題である。今回、脊髄損傷患者の抜管後の呼吸管理において、侵襲的呼吸管理を回避できた事例を経験し、チーム医療において看護師に求められる能力について示唆が得られたため報告する。
【方法】
 本症例の経過を細田のチーム医療の4要素の視点にて振り返る。
【倫理的配慮】
 個人情報の保護と参加の自由、不参加によって不利益を被ることのないことを患者・家族に口答と書面にて説明し、同意を得た。院内看護局倫理委員会の承認を得た。
【結果】
 30歳代男性。溺水およびC5破裂骨折と診断され、頸椎後方固定術施行。術後無気肺のため人工呼吸器管理となった。主治医、担当理学療法士(以下PT)決定後、主担当看護師が中心となり多職種間の調整を図った。その後、無気肺は改善し、術後7日目に抜管。
抜管後、酸素化不良のためネーザルハイフロー使用。咳嗽が弱く、痰の喀出が不十分であることから、気管切開の必要性について医師から患者へ説明され、同意が得られた。抜管翌日、看護師・PT間で排痰方法を検討し、排痰補助装置カフアシストを用いた排痰援助を導入。喀痰の程度や患者の苦痛を確認しながら、看護師が共通した手技で排痰援助を実施した。徐々に痰量減少のためカフアシスト使用頻度も減少し、抜管8日目ネーザルカニューラに変更となり、翌日ICU退室。
【考察】
 細田のチーム医療の4要素から看護師の果たした役割を考察。
1.専門性志向(各職種が専門性を発揮すること):常に患者を観察し、変化を察知。アセスメントから適切な介入方法を選択し、排痰援助を行った。多職種とコミュニケーションを図り、意見や情報交換をし、ケアの調整をした。
2.患者志向(患者が中心であること):抜管後、患者は「声が出なくても良くなるためなら何でもして下さい」と、気管切開に同意する発言があった。しかし、排痰困難が持続した際には「もうちょっとで出そうだから、もう少し頑張ってもいい」と繰り返し、できれば発声機能を失う再挿管や気管切開は避けたいという気持ちが伺えた。看護師はその思いに寄り添い、多職種カンファレンスで患者の気持ちを代弁し、挿管回避の可能性について検討した。
3.職種構成志向(複数の職種が関わること):医師、看護師、PTが主体となり介入。必要に応じて他職種の介入を依頼した。
4.協働志向(複数の職種が互いに協力していくこと):医師に排痰援助への参加を呼びかけ、PTと協働して効果的な排痰援助方法を検討した。
 本症例において、患者の呼吸状態の変化をアセスメントし、適切な排痰援助方法を選択したことと、患者や多職種とコミュニケーションを図り、排痰ケアやリハビリ計画の調整をしたことが看護師の果たした役割であったと考える。看護師は「チーム医療のキーパーソン」として期待は大きいとされている。期待に応えるためには、患者の最も身近にいる医療従事者として今回果たした役割が必要になると考える。役割遂行のためにアセスメント能力、コミュニケーション能力と多職種との調整能力が必要であり、今後は能力取得のための取り組みが課題と考える。
【結論】
1.患者の状態変化を察知し、アセスメントから適切な介入方法を選択する能力が必要である。
2.患者や多職種と意見や情報交換ができるコミュニケーション能力が必要である。
3.多職種と協働して役割を遂行できる調整能力が必要である。