第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

一般演題(示説) P3群
看護教育・その他

2018年7月1日(日) 09:45 〜 10:15 ポスター会場 (1階 展示ホール)

座長:笠原 真弓(浜松医療センター 放射線・検査室)

[P3-1] 救急搬送患者記録用紙改訂のとりくみ

内堀 恵, 春日 美幸, 吉沢 裕恵, 有賀 まどか (伊那中央行政組合伊那中央病院)

【目的】当院は長野県南信地域にあり、主に急性期医療と高度専門医療を担っている。平成24年に救命救急センターの指定を受け、地域の三次救急を行っている。初療チームスタッフは煩雑な業務の中で、患者優先となり家族への対応が後回しになってしまうというジレンマを抱えていることがわかった。実際に記録を見直すと家族に関する記録が少なく、患者家族との関わりが薄いと考えられる。水谷氏は待合室での家族対応に関して「家族にとって、患者の状況がわからないことはさまざまな想像をかき立て不安が増強されやすい。適宜、家族への情報提供を行い家族が患者の状況を認知できるよう対応する必要がある」1)と述べている。今回、救急搬送患者家族に焦点をあて、早期介入のひとつのツールとして搬送患者記録用紙を「同乗者の確認とその反応」が記入できるように改訂した。記録を書くことにより、スタッフの家族への対応に関する意識や行動の変化がみられたためここに発表する。
【方法】研究期間は平成29年5月~12月。方法1救急搬送患者記録用紙の変更。2記録用紙変更前後1カ月間の患者家族に関する記録内容を調査・比較。3記録用紙変更2か月後初療スタッフに対して患者家族に対する意識調査を実施。アンケート対象は救急初療室看護師11名
【結果】チーム内で救急搬送時の家族の様子とその反応を記載してもらうよう周知したが、実践できていなかった。そこで、救急搬送記録用紙へ「同乗者の確認とその反応」を記載する欄を追加した。2か月後、使用してみて行動と意識がどう変化したかアンケートを実施した。来院時心肺停止患者に関しては変更前も変更後も全例で家族の反応の記載が行われていた。軽症者から重症者の記録では、変更前は6%だったものが変更後は42%へ増加していた。スタッフからは「搬送記録用紙に項目があることで同乗者の確認を本人や救急隊へ早めに行うことができる。」「来院時意識して患者を迎え入れ、声掛けができるようになったと思う。」「誰が来ているのか意識してできるようになり、以前より面会のことや家族のことを意識してするようになった。」などの意識変化がみられた。
【考察】家族対応に関してジレンマを感じていたスタッフが多かった。来院時心肺停止患者は搬送されてすぐに事務員が待合に案内し、面会時の家族の反応を見てから看護師が個室に案内するなどの対応を行っていた。記録用紙改訂後は搬入時から家族の様子を観察し、必要時個室に案内するなど家族に対しての働きかけが行えるようになった。軽症患者から重症患者の記録が増えきているとはいえ、42%にとどまったことは、軽症の患者の家族では比較的に動揺が見られなかったこと、診察時間が短時間のため記録が残らなかったのではないかと考える。重症であればあるほど家族の精神的負担は大きい。水谷氏は三次救急患者の看護の実際について「家族も患者の身体的危機状態から患者の生命に対する不安が強く危機的状態に陥りやすい。危機に対し患者・家族が適応するには早期からの介入が重要である。」2)と述べている。搬入時の家族の様子を観察し、声かけを行う事は患者家族の安心感にもつながり、信頼関係を築くことに繋がる。記録用紙を改訂したことにより、スタッフの意識付けや情報共有の場にもなり効果的だったと考える。
【課題】今後は煩雑な業務の中でも、すべての患者家族に対して来院時から関わりがもてるよう、役割分担の工夫など検討しながら記録用紙を活用していきたい。
【引用文献】1)、2)救急患者と家族のための心のケア 山勢博彰編著