[P4-3] 当院集中治療室における敗血症患者の再入室のリスク因子 ~退室時のバイタルサインに着目した検討~
【背景】敗血症および敗血症性ショックの死亡率は著しく高い。このような敗血症患者に対するICUでの治療後、一旦退室したにもかかわらず、病態が悪化して再入室することがある。一般に,ICUの再入室は病院滞在日数を増やし、病院死亡率の独立したリスク因子であるとされている。また、ICUに再入室することで患者家族のQOLは低下する。したがって、死亡率の高い敗血症患者の再入室はさらに、生命予後や患者家族に強い影響を及ぼす可能性があるため、その予防が重要となると考えられる。【目的】ICUに入室した敗血症患者のICU退室時のバイタルサインから再入室のリスク因子を明らかにし、ICU退室後の病棟での看護ケアの支援方法を検討すること。【研究方法】対象は、2011年4月~2017年10月にICUに入室した患者のうち、死亡症例、18歳未満の小児患者を除いた214例とした。調査法は後方視的診療記録調査で調査項目は年齢、性別、ICU入室時のAPACHE (Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)2スコア・SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)、ICU在室日数、ICUでの治療として人工呼吸日数・腎代替療法の有無と日数、気管切開の有無、退室時のバイタルサインとして、呼吸数・心拍数・収縮期血圧・せん妄の有無を調査した。結果は、症例数と群内における割合、あるいは平均値と標準偏差で示した。統計処理は、SPSS Ver.25を用い、Mann-WhitneyのU検定及びFisherの正確確率検定を行った。また、再入室に影響する要因を調査するために、再入室の有無を従属変数とし、退室時の呼吸数・心拍数・収縮期血圧・せん妄の有無を独立変数として、ロジスティック回帰分析を行った。さらに、呼吸数・収縮期血圧についてROC曲線を作成し、カットオフ値を算出した。すべての項目につき、有意水準は5%とした。本研究は札幌医科大学附属病院看護部看護研究審査委員会の承認を受けており、開示すべき利益相反はない。【結果】敗血症214例中ICU再入室患者(再入室群)は42例で,非再入室患者(非再入室群)は172例であった。両群の年齢、性別、重症度(APACHE II, SOFA score)、基礎疾患に有意差はなかった。両群で退室時のバイタルサインを比較したところ、呼吸数(P<.01)と収縮期血圧(P=.005)、せん妄の有無(Fisher's exact probability<.01)が関連していた。ロジスティック回帰分析の結果、有意なモデルが得られた(χ2=39.52、df=4、P<.01)。独立した危険因子オッズ比(OR)/95%CIは、呼吸数[1.169/1.078-1.268]、収縮期血圧[1.025/1.004-1.045]、せん妄の有無[0.359/0.132-0.873]であった。さらに、呼吸数および収縮期血圧のROC曲線を作成したところ、呼吸数(P<.01、AUC:0.72)、収縮期血圧(P=.005、AUC:0.64)であり、それぞれのカットオフ値は呼吸数24回、収縮期血圧115mmHgであった。【考察】退室時の呼吸数・収縮期血圧・せん妄の有無は有意に再入室群で高かった。呼吸数のカットオフ値をqSOFA(Quick Sequential Organ Failure Assessment) と比較すると、「呼吸数22回以上」の項目とほぼ一致する結果であった。また、意識の変容についても、再入室群と関連が見られた。これらから、敗血症患者において、一般病棟でのqSOFAに着目した看護師の観察が重要であると考えられる。加えて、敗血症患者のICU退室時の基準についてもqSOFAをもとに検討する必要があると考える。【結論】退室時の呼吸数・収縮期血圧・せん妄の有無は有意に再入室群で高かった。これらの観察項目をもとに、看護師の観察による患者の重症化予防が期待される。