第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

一般演題(示説) P4群
災害看護・その他

2018年7月1日(日) 10:25 〜 11:00 ポスター会場 (1階 展示ホール)

座長:赤池 麻奈美(東京女子医科大学東医療センター 看護部 救命ICU)

[P4-4] 地震災害発生時に現地において被災者支援に携わった看護師の体験

渡部 みさき1, 鈴木 亜佑実2, 佐野 有希3, 森 恵子4, 菅野 久美5 (1.聖隷三方原病院看護部, 2.社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院, 3.岡崎市民病院看護局, 4.浜松医科大学医学部看護学科, 5.福島県立医科大学看護学部)

【背景】災害発生時に被災者支援に携わった看護師の体験を明らかにすることは、今後発生が予測される地震災害発生時に、看護職としてどのような被災者支援が求められるのか、被災者支援を行う看護職に対してどのような支援が必要になるかを検討する一助になる。【研究目的】 地震発生現場に派遣され現地において被災者の支援に携わった看護師が、被災地でどのような体験をしたかについて明らかにすること。本研究での地震災害とは、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の3つとした。【方法】1.研究デザイン:質的記述的研究デザイン 2.研究対象者:地震災害発生時に被災地へ派遣され、被災者支援に携わった体験を持つ看護師。3.研究参加への同意の得られた対象者に研究者の作成したインタビューガイドを用いて半構造化面接を実施した。4.分析方法:面接内容の逐語録を作成し、Krippendorffの内容分析の手法を参考に分析を行い、内容分析によって推論された最も上位の概念を「大表題」、「大表題」の下位の概念を示す用語を「表題」とした。【倫理的配慮】 A大学の臨床研究倫理委員会の承認を得で実施した。対象候補者に研究の趣旨、研究参加の任意性と中断の自由、不利益の回避、個人情報の守秘、データの保管と廃棄、結果の公表について書面を用いて説明を行ない、署名による承諾を得た。研究対象者は、地震発生早期に被災地の悲惨な状況の中で被災者に対する心身への援助を提供する為に現地に入った看護師であるため、災害発生当時の事を思い出し、面接途中に精神的動揺を来たした場合には、面接の継続の可否を研究対象者に確認すると共に、面接途中あるいは面接終了後に、看護部関係者に報告を行い、対応を依頼することとした。【結果】1.対象者の概要:対象者は9名で、派遣地は阪神淡路2名、東北4名、熊本2名、東北・熊本1名、派遣時の看護師としての経験年数は、3年から27年であった。派遣時の活動内容は様々であり、派遣時期は、地震災害発生数日後から2か月後まであった。面接時間は平均36.2分であった。2.被災者支援に携わった看護師の体験として、【被災者のところへ赴いて行う積極的な情報収集と傾聴】【準備の不足やタイミングの問題で適切な看護援助ができなかったという不全感】【被災地で生活をともにし、チームメンバーを思いあいながらの協働】【支援活動のための準備と場をつくり、人や情報を結び合わせる役割】【十分な準備をして臨んだが、一喜一憂させられた被災地での生活】【被災地のさまざまな現場を目の当たりにし衝撃を受けたことで、被災の現状を他人事と思えない思い】【日常生活が取り戻され、支援活動が終了するとともに他人事になってしまう思い】【夢中でし続ける支援活動】【被災者のためになっているという手ごたえを感じたときの嬉しさ】の9つが明らかとなった。【考察】被災地で被災者支援に携わった看護師が持った被災を他人事と思えない気持ちが、派遣後に日常生活を取り戻すにつれて他人事に変わってしまうことに戸惑いを感じることが明らかとなった。また、活動時には感じなかった疲労や負担が、派遣後の生活に影響するのではないかと推察された。これらのことから、災害派遣を通した感情の変化について事前に学ぶことや、派遣後のフォロー体制の強化が必要であることが考えられた。【結論】地震発生現場に派遣された看護師の被災地での体験として、9つの体験が明らかとなった。また、災害派遣を通した感情の変化について事前に学ぶことや、派遣後のフォロー体制強化の必要性が示唆された。