[P4-5] トリアージ演習に参加した看護学生に生じる戸惑い~倫理的葛藤に焦点を当てて~
【背景】災害時医療では、「災害医療の3T(Triage、Treatment、Transportation)」が鍵となり、中でもトリアージが一番重要とされる。研究者の所属施設においても救急看護の授業の中でトリアージ演習を実施しているが、再現された災害現場や傷病者の状況に対して看護学生がショックを受け、茫然と立ち尽くす様子や、自分の行なったトリアージに自信が持てず、自分の判断の正当性、黒タグをつける際の葛藤について振り返りを行う学生が多い。【研究目的】 A大学医学部看護学科において、平成29年度4年次後期に開講される救急看護の中で行なわれるトリアージ演習において、看護学生がトリアージを実施する際に生じる戸惑いを明らかにすること。【方法】1.研究デザイン:質的記述的研究デザイン。2.研究対象者:A大学医学部看護学科において、平成29年度4年次後期に開講される救急看護の授業でトリアージ演習に参加した学生のうち、研究への参加に同意の得られた学生。3.データ収集方法:研究者が作成したインタビューガイドを用いて、自由回答法により、4名1グループでフォーカスグループ面接を実施した。4.データ収集期間:平成29年11月。5.分析方法:面接内容の逐語録を質的データとして、Krippendorffの内容分析の手法を参考に分析を行った。【倫理的配慮】 A大学の倫理委員会の承認(承認番号:17-177)を得た後、対象者に研究参加の任意性、不利益の回避、プライバシーの保護、匿名性の遵守、個人情報の保護、データの保管と管理および破棄、研究結果の公表について説明し同意を得た。また、看護学生が研究対象者であるため、研究参加に同意しないことにより成績およびその後の学生生活に不利益が及ばないことについて説明した。面接の中で自分自身の体験を語ることで、演習での出来事が日常的に想起され、心理的負担が生じる可能性があるため、インタビュー実施後に心身の変化が生じた場合は、研究責任者に速やかに相談するようあらかじめ説明を行うなどの配慮を行った。【結果】1.対象者の概要:対象者は4名(男性1名、女性3名)で、面接時間は約50分だった。2.トリアージ演習に参加した看護学生に生じる戸惑いとして、【自信のない中で、傷病者の優先順位をつける】【トリアージで行う判断は、自分が考える看護ではないと感じる】【限られた時間の中で傷病者や家族に対して何をしてあげればいいかわからない】【傷病者やその家族のためを思い根拠のはっきりしない声掛けをしてしまう】の4つが抽出された。【考察】災害は突然起こる事象であり、今まで教育を受けてきた患者・家族への関わり方ではトリアージ場面に対応できず、【トリアージで行う判断は、自分が考える看護ではないと感じる】体験をもたらしていた。【自信のない中で傷病者の優先順位をつける】【限られた時間の中で傷病者や家族に対して何をしてあげればいいかわからない】体験は、自分が行いたい看護とトリアージで求められる役割の違いをより学生に認識させていた。各論実習の中で様々な患者と出会い、対象への援助を考え実施してきた4年生であっても、演習において再現された災害現場や傷病者に対してトリアージを行う中で、自分の持つ知識・技術が充分でないことを思い知らされたことが「戸惑い」に繋がったと考える。学生の戸惑いを表出する場を設け、学生が演習の中で感じた「戸惑い」が、災害医療、トリアージについての知識を深め、今後臨床の中でさらに経験を積んでいくことのモチベーションに繋がるような教育内容の検討の必要性が示唆された。