第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション1
人工呼吸器離脱に関わるコンフリクト

2018年7月1日(日) 10:15 〜 12:15 第5会場 (2階 平安)

座長:道又 元裕(杏林大学医学部附属病院 看護部), 座長:濱本 実也(公立陶生病院 集中治療室)

[PD1-4] 人工呼吸器離脱プロトコルの運用にまつわるコンフリクト

長谷川 裕貴 (亀田総合病院 心臓血管外科)

 人工呼吸器離脱の遅延は合併症の増加、死亡率の上昇、医療費の増加などにつながると報告されている。そのため、人工呼吸器からの離脱は可及的速やかに、かつ安全に行われることが不可欠であり、共通認識を有した多職種チームによるアプローチ(Multidisciplinary Team Approach)が推奨されている。そのような側面から人工呼吸器離脱プロトコルを導入することは効果的な手段の一つとされており、医師の判断を主体に離脱を行うよりも早期に離脱が可能であったとの報告もある。
 このプロトコルは医師以外の医療従事者が実施しても安全に運用できる内容でなくてはならない。米国では呼吸療法士が中心となり、各施設で定められたプロトコルに準じ、人工呼吸器の離脱を進めている。筆者が勤務する施設においても2012年より心臓血管外科術後の患者を対象とした人工呼吸器離脱プロトコルを作成し、コメディカル主導のもと、人工呼吸器の離脱を行っている。 
 人工呼吸器離脱プロトコルを運用するにあたり生じるコンフリクト(主義・主張上の衝突)はそれを運用する医療従事者間で発生する場合が多い。医師は治療者として刻々と変化する患者の病態に対応すべく迅速な現場判断を必要とされる。そのため、呼吸器離脱のプロセスにおいてもプロトコルの内容から逸脱した評価基準をもって方針を変更する場合がある。そのような変更が周知されない場合は多職種間での共通認識が破綻し、プロトコルに準じた円滑な離脱が困難になることがある。同様に医師や看護師など、勤務交代時に十分な申し送りが実施されない場合にも人工呼吸器離脱のプロセスが頓挫するケースがある。
 人工呼吸器離脱プロトコルを現場に浸透させ効果的に運用するためには、設定されたプロトコルを多職種が協同して粛々と遵守することが重要だと考えられる。多種多様な病態を背景とした人工呼吸器患者に対し、定められたプロトコルを機械的に応用することに疑問を抱く医療従事者も少なくないが、まずは多職種チームで念入りに熟考、設定されたプロトコルを運用し、その過程で問題点を抽出し内容を修正していくというステップを踏むことが望ましい。医師がやむを得ず、臨床的判断でプロトコルから逸脱した行動をとった場合は、その判断基準を以後のプロトコルに反映させ、内容をブラッシュアップしていくことが重要である。そのような過程を省略することは医療者側、患者側、双方の不利益につながる可能性が示唆される。