第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション4
未来は特定行為にどんな一歩を踏み出して欲しいと思っているのか?~特定行為がもたらすクリティカルケアの質向上と安全性~

2018年7月1日(日) 14:50 〜 16:30 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:塚原 大輔(公益社団法人日本看護協会看護研修学校), 座長:戎 初代(東京ベイ・浦安市川医療センター)

[PD4-3] 二次医療機関における特定行為に係る看護師の現状と今後の展望

栗木 公孝 (医療法人社団 シマダ 嶋田病院 看護部)

演者は、人口7万人の医療圏の急性期医療を担う地域支援病院にて、集中ケア認定看護師として勤務している。自施設では、集中治療室8床と急性期病棟96床を有しており、認定看護師としてこれまで、人工呼吸器装着患者の全身管理、異常の早期発見と対処を行ってきたが、担当医の多重課題に伴い早期介入に繋がらないケースを経験してきた。また、急性期病棟では呼吸器を専門としている医師が少なく、集中治療室退出後の呼吸管理が医師の裁量によって異なり、ほとんどの症例で設定調整されることなく経過している現状であった。そのため、自施設でニーズの高い「人工呼吸器関連」とその評価に関する「動脈血液ガス関連」の研修を受講することで、重症化を回避するための早期介入と管理方法の統一化を図るのではないかと考え特定行為研修の受講を希望した。
特定行為研修修了後に取り組んだことは医師への周知である。医師の理解が乏しいと活動が行えないため、医局会、管理者会議に参加し特定行為に関するプレゼンテーションや手順書の提示を通して特定行為に関する理解を深めた。次に、指導医として集中治療専門医へ研修修了後のフォローを依頼した。指導医の指示のもと、集中治療室内で特定行為の実践を重ねることで徐々に他の医師の特定行為の認知に繋がることができた。成果として9ヶ月間で集中治療室からは動脈ライン挿入の依頼32件、急性期病棟では動脈血液ガス評価の依頼29件であった。
また、呼吸器設定変更に関する実践では、研修前は自分が行った評価を医師へ伝え人工呼吸器の設定調整を依頼していたが、特定行為研修修了後は手順書の範囲内で患者の全身状態を評価し、呼吸器設定変更を20件実践することができた。
特定行為を実践する中で、手順書範囲外や判断に困る場合は、指導医がサポートしてくれることで、安心して特定行為を実践することができている。今後も自分の限界を知ったうえで、安全に特定行為を実践できるよう、患者の全体像をみて総合的に評価し実践することを心がけていきたい。
研修を終えて今後の展望として、当院は訪問看護ステーションがあり、在宅で呼吸管理を行っている患者、待機患者も多いため、院内活動にとどまらず、訪問看護師と協働し、地域診療、在宅療養支援に貢献できるよう活動範囲を拡大していきたい。また、当地域の現状として特定行為研修制度への認知が低いため、訪問看護、在宅医療現場の関係者に対して、特定行為研修の認知を広める企画等を検討し、地域包括ケアシステムにおける特定行為研修修了者の育成に繋げる活動も行っていきたい。
数少ない特定行為研修修了者の一人として、当院の役割や現状を踏まえ、地域医療のニーズを理解しながら、地域の住民が自宅でその人らしい生活が送れるよう、クリティカルケアの専門的介入を活かして地域医療包括ケアシステムに貢献していきたいと考える。