第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

パネルディスカッション4
未来は特定行為にどんな一歩を踏み出して欲しいと思っているのか?~特定行為がもたらすクリティカルケアの質向上と安全性~

Sun. Jul 1, 2018 2:50 PM - 4:30 PM 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:塚原 大輔(公益社団法人日本看護協会看護研修学校), 座長:戎 初代(東京ベイ・浦安市川医療センター)

[PD4-6] 特定行為研修事業に期待すること

藤谷 茂樹 (聖マリアンナ医科大学 救急医学)


2012年に厚労省の診療看護師試行事業による第一期生が卒業してから、2015年度の特定行為のできる看護師育成事業にも当初かから関わってきた。このきっかけは、2000年より2007年まで米国で研修をしてきたが、その中でも集中治療と感染症フェローシッププログラムでは、Nurse practitionerにとりわけお世話になった。常日頃患者に近い位置に存在し、フェローや指導医への橋渡し、そして、フェローには、彼ら彼女たちの長年培った経験に基づいたアドバイスなど、特に右も左もわからぬ1年生フェローにはとてもありがたい存在であった。日本でも、Nurse practitioner制度について、国会でも審議されたが、日本での受け入れはまだ、時期尚早ということで、特定看護師としての位置づけとなってしまった。
医師のポジションを奪われたくない、看護師がどうして、ミニ医者みたいことをしなければならないのか、薬剤師の持っていない処方権などどうして、代行であったとしても診療看護師・特定看護師ができるのであろうか。などなど、解決されていない問題がある中での見切り発進となった。
その一方で、働き方改革という新たなキーワードの出現で、労働時間の削減と医師のサポートをすることが重要であるという追い風の流れになってきている。厚労省の当初の狙いは、2025年までに10万人の特定看護師を育成し、在宅診療の強化を図ろうと試みている。それが、ここにきて、医師のサポート体制の強化というフレーズを使ってきている。
特定行為研修は、共通科目315時間の履修と、21区分38特定行為のうち、自分の好きな区分を選択できる制度である。集中治療の認定看護師は、どの区分が必要であろうか。患者の全身を診る(看る)という観点から、ほぼすべての区分が必要ではないだろうか。共通科目を受けて晴れて特定看護師になったとしても、今までにいくつもの施設で行われてきたことが、手順を踏めば、法的に守られるということになるが、診療の質はほとんど変わっていない。
私は、地域医療振興協会という地域で人材不足に困る施設で、特定看護師に21区分すべて指導している。これは、この行為をすべて診療で使用するしないにかかわらず、どのような状況に置かれても、一定の卒後研修を受ければ、どの行為もできるようにならなければならないと考えているからである。また、診療看護師が2年の卒業後の育成期間を設けているのと同様に、特定看護師も、診療看護師に近づけるべく、臨床推論やカルテ記載など、実地研修をしっかりさせている。
集中治療認定看護師から、特定看護師になられる方には、現場レベルでチームとして活躍していってもらうためには、パートしかできないという特定看護師ではなく、是非、診療看護師に近い形で、業務に携わっていただきたいと切に願っている。