第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

集会長講演

集会長講演
安全と安心を信頼に繋ぐ

2018年6月30日(土) 09:40 〜 10:30 第1会場 (5階 大ホール)

座長:清村 紀子(大分大学医学部看護学科)

[PL] 安全と安心を信頼に繋ぐ

佐藤 憲明1,2 (1.日本医科大学付属病院 看護部, 2.富山大学大学院博士課程生命臨床医学専攻 危機管理医学・医療安全学)

昨今では、産業界においても‘安全と安心’という言葉は定着し、もはや消費者にとっては常識ともいえるフレーズとなりました。医療界では、古くからそのニーズは高いところですが、繰り返される医療事故の発生から、近年では国民のニーズが劇的に変化をしています。
本来医療は、患者や家族と医療従事者の信頼関係、ひいては医療に対する信頼の下で、患者の救命や健康回復を最優先として行われるものですが、医療事故による痛ましい事案が発生したことで、国民の安心に最も密接な関わりを持つ医療に対し、信頼が揺らぎかねない状況となっています。このため、医療事故の発生を予防し、医療に対する患者の信頼を高めることが国策としても課題となっています。
近年の医療安全の取り組みでは、平成13年に患者安全推進年として、「Patient Safety Action」患者の安全を守るための医療関係者の共同行動が発令され、平成27年10月には、医療事故調査制度にかかる医療法施行規則の一部改正として、医療事故調査制度が施行されました。この制度では、医療機関で発生した医療事故の相談や支援、医療事故の再発予防を目的として、各領域の専門家による事故分析と調査が行われ、本学会はもちろんのこと、医療系専門学会が参画しています。しかし、我々が所属する急性期医療現場においても医療安全を目的とした臨床教育は画一的なものが多く、多くの医療機器や複雑な病態にある患者の看護を安全に行うための医療安全教育が充実しているとは言い難いところがあります。
まず、臨床実践者には、安全が保障できる個々のテクニカルスキルを習熟させ、そして、安全な医療を推進するための医療チームを構成する必要があります。
さらに、患者や家族とは、治療方針や治療の現状について情報を共有し、理解を頂きながら医療を進めることが、医療安全対策の鍵となり、ひいては信頼関係の醸成につながると確信します。
医療安全対策を講じる中で、必ずしも多くのエビデンスはありませんが、医療安全は、これまでの有害事象の分析から事故の再発予防策を講じる先行型安全管理に転じていく課題が急務となっています。
集会長講演では、昨今の医療安全の風潮と急性期医療における安全対策の現状を分析し、集会テーマとした「安全と安心を信頼に繋ぐ」について講演させて頂きます。