第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

Pro-con

Pro-con3
重症呼吸不全患者の人工呼吸器離脱プロトコールの適応(賛成派vs反対派)

2018年7月1日(日) 10:45 〜 11:25 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:尾野 敏明(杏林大学医学部付属病院)

[Pro3-1] 重症呼吸不全患者の人工呼吸器離脱プロトコールの適応(賛成派)

櫻本 秀明 (茨城キリスト教大学)

個々の患者に対して、医療がテーラーメイドに提供されるに、越したことはない。だが、患者にテーラーメイドな医療が適切に提供されるためには、何かしらかの基準となる存在が必要である。そうした基準と呼べるものが、抗がん剤のレジュメや、プロトコールなどである。基準というからには、もちろんある程度の効果が保証されている。人工呼吸器離脱プロトコールにも、確固たるとまではいかないものの、それでも十分な質・量の研究データが存在する[1]。一般的な、人工呼吸器離脱プロトコールには、いわゆる自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial: SAT)と自発呼吸トライアル(spontaneous breathing trial, SBT)、カフリークテストなどが含まれる。プロトコールは包括的な手順に関する総称のことで、その内容はもちろん完璧とは言えない。だが、日々改善されおり、例えば、気道因性の問題すなわち、痰の正常・量などを加味しようとする傾向もある。
また、国の報告によると2014年の時点で、特定集中治療室を有する施設数は780施設、6552床、9月中の取り扱い患者数117317人[2]ということになっている。これに対し、2013年度、集中治療専門医数は984名[3]である。これらの数字を集中治療専門医1人あたりに換算すると、専門医数0.78人/施設、6.5床/人、患者数117.3名/月/人ということになる。はたして、この数値は、十分な数と言えるだろうか。おそらく、多くの施設では集中治療の専門家がICU患者を常に受け持ってはいない。大学病院ですら、集中治療の専門家と呼べる人は限られていて、24時間365日、目を光らせてはいないだろう。多くの場合、若い非専門家の医師を介して、集中治療は提供されている。従って、状況によっては、エビデンスに基づいた適切な医療がタイムリーに提供されない可能性もあるだろう。さらに、2015年に特定行為制度がスタートし、人工呼吸器離脱に関する特定行為を行えるようになっている。挿管・抜管などの行為も引き続き検討中であり、社会的な後押しもある。こうした社会的な前提を抜きに、今回のセッションテーマを考えることはできないと思う。
そして、こうした状況を鑑みれば、はたして重症呼吸不全患者の人工呼吸器離脱プロトコールの適応について、今更、その是非を問う必要があるか疑問に思えてくる。この点に風穴をあけるような奇抜な発想や新規の小規模データなど反対派の意見を通じて、議論が進むことを祈る。

1. Girard, TD., et al: . Am J Respir Crit Care Med 2017, 195(1):120-133.
2. 厚生労働省大臣官房統計情報部: 平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況.
3. 専門医数の現在 加盟学会の専門医数の一覧表 [http://www.japan-senmon-i.jp/hyouka-nintei/data/] (2017/1/10現在)