第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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Pro-con

Pro-con3
重症呼吸不全患者の人工呼吸器離脱プロトコールの適応(賛成派vs反対派)

Sun. Jul 1, 2018 10:45 AM - 11:25 AM 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:尾野 敏明(杏林大学医学部付属病院)

[Pro3-2] 人工呼吸器離脱プロトコル反対派の見解として

後藤 順一 (河北総合病院 ICU)

人工呼吸患者の管理において、速やかな人工呼吸からの離脱・抜管の企図の重要性が謳われている。より早期における人工呼吸器からの離脱そして抜管は、人工呼吸器誘発肺損傷、人工呼吸器関連肺炎、気道損傷などの関連合併症の回避に繫がること、さらにはICU滞在時間の短縮やコスト削減への影響が知られている。そもそも人工呼吸器離脱とは何か?「人工呼吸器離脱とは人工呼吸が必要となった病態が改善し離脱の可能性があると判断してから実際に抜管が成功するまでの過程」と本学会では提言している。このことから、人工呼吸器離脱のためのプロトコルとは、患者が安全に抜管できるまでの過程を標準化し示すものであることが言える。これら抜管までの過程を教育プログラムとして、人工呼吸器離脱に関するe-learningやシミュレーションコースが、本学会人工呼吸器ケア委員会主催により各地で開催されている。またその成果がクリティカルケア領域において徐々に広がりつつあり、コース開催回数の増加と共に増える受講生の数が、現代のクリティカルケア環境における、人工呼吸器離脱プロトコルの教育的ニードとして表されてと言えよう。
この人工呼吸器離脱プロトコルでは、気管挿管患者の抜管までの過程を、気道,呼吸、循環,意識や筋力,その他の全身状態の改善程度を包括的に評価する必要があることとあげている。その中で、鎮静の管理においては自発覚醒トライアル(Spontaneous Breathing Trial:SAT)、呼吸の評価としては自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial:SBT)がほぼ確立した手法となっている。しかし、SBTの成功は人工呼吸器からの離脱を保証するものであるが、抜管を必ずしも保証するものではない。これら評価の末に安全な抜管が目標としてプロトコルが存在するのであればいささか矛盾を感じる。また、SBTにおいて、最終的な人工呼吸器設定を変更し人工呼吸器離脱を指示を出すのは医師である。プロトコルが適切に行われ、人工呼吸器離脱の過程が滞りなく進んだとしても、最終判断は医師に委ねられ、医師の裁量一つで覆る可能性があることが現状である。SATにおいてもSBTにおいても共にTrialである。要するに、開始安全基準を満たした患者に対して人工呼吸器のサポートを中断し耐えられるかをTrial(試す、試験する)することが、このプロトコルの有用性が発揮できる要素であると私は考える。果たして医師個人の意思が最終判断となるプロトコルは有用であろうか?今回はこのプロトコルの有用性または必要性について、cons(反対)の立場に立ち一度見直し考える時間を頂いたため、一石を投じることができればと考えている。