第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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気管挿管患者の口腔ケア(清拭派vs洗浄派)

Sun. Jul 1, 2018 11:35 AM - 12:15 PM 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:田戸 朝美(山口大学大学院医学系研究科)

[Pro4-2] 気管挿管患者の口腔ケア(清拭派)

剱持 雄二 (東海大学医学部付属八王子病院 看護部 ICU・CCU)

一般的な口腔ケアの目的には、口臭予防、歯周病予防、う蝕予防、爽快感の提供、唾液分泌の促進などであり、これらに加えてクリティカルケア領域で行う口腔ケアの目的はVAP 予防である。VAPは胃内容物が口腔・咽頭に逆流してVAPの発症率が増加することは一つの原因とされており、口腔に貯留した病原微生物が不顕性誤嚥のみならず、口腔ケアによって下気道に侵入させてしまっては本末転倒であり、口腔ケアでもっとも重要なことは、もともと貯留しているまたはケアによって小削げ落ちた「汚染物の回収を安全に効果的に行うにはどうするか?」である。 口腔ケアにおける清拭法は、殺菌成分が含有された洗口液を塗布し、口腔粘膜・歯牙・歯肉、舌・口唇に付着した汚染物をスポンジブラシ・ガーゼなどで除去をする。ケアの前に保湿剤を塗布することで口腔ケアによる粘膜損傷を予防し、ケアの後に保湿剤を塗布することで乾燥による病原微生物の増殖を抑制する。清拭法は少量の水分によってケアを行うため、ケアによって口腔に貯留した病原微生物の誤嚥のリスクは少なく、米国クリティカルケア看護協会における「人工呼吸器・非人工呼吸器装着患者に対する気管チューブと口腔ケアに関する手順書」においては前述した方法にブラッシングを加えた方法が採用されている。一方、洗浄法は2016年に発表されたコクランレビューによるとVAP発生の抑制に生理食塩水によるリンスは生理食塩水綿棒よりも有効(RR:0.47, 95%CI:0.37 - 0.62 , P <0.001) であるとしており、これにより大量の洗浄水によって病原微生物が希釈されることによる効果は大きいことが考えられる。しかし、これも重要なことは「汚染物の回収を安全に効果的に行う」ということであり、熟練した看護師であれば、知識と経験による技術でカバーできるが、看護教育で口腔ケアを十分に習得してきていない未熟な新人看護師が十分にかつ安全に行えるか疑問が残る。さらに洗浄法は清拭法に比べて大幅に時間を要することや洗浄をする者に加えて、気管チューブや固定具・テープを把持する者が追加で必要とし、看護師の負担が多い。患者側においては、昏睡・深鎮静状態の場合、誤嚥を回避しやすいが、覚醒していればある程度のセルフケア感覚が必要で洗浄水を注入しても頰に洗浄水を止めておける、口外へ垂れ流すことができる能力が必要である。体位制限があり側臥位ができない場合も困難である。吸引具(排唾菅やヤンカー、吸引エジェクターなど)や気管チューブの構造(カフ上部デバイスの有無)によっても洗浄による誤嚥のリスクは異なってくる。