第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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シンポジウム

シンポジウム1
チーム医療の充実と安全管理の成果 チームステップスの構築

Sat. Jun 30, 2018 3:40 PM - 5:40 PM 第1会場 (5階 大ホール)

座長:道又 元裕(杏林大学医学部附属病院 看護部), 座長:久間 朝子(福岡大学病院看護部 救命救急センター)

[S1-2] 当院のRRS・RSTにおけるチームSTEPPSの活用と今後の課題

中村 紀子 (彦根市立病院 ICU・CCU病棟)

 当院のRapid Response System(以下RRS)とRespiratory Support Team(以下RST)は,平成27年度より医療安全推進室の傘下で活動している.また,平成26年度に「チームSTEPPSプロジェクト」を立ち上げ,平成27年3月より病院全職員向けの研修を開始した.現在まで計7回348名(在籍890名)全体39%の参加者を集め,全職員の受講を目標に定期的な研修を継続している.
 医療安全・チーム医療においてコミュニケーション技術は必要不可欠である.当院では医療事故防止・コミュニケーション技術の向上と共通言語の理解を目的としてチームSTEPPSを取り入れ,RRS・RSTの活動でもチームSTEPPのツールを活用している.
RRSでは,病棟看護師はRRS要請時にPHSでMETに連絡を行う.その際,患者の状況をSBARで報告することを推奨している.RRSのコンポーネントでもある「患者急変を発見する要素」の中心となるのが,日々のケア・観察を行っている看護師である.些細な変化の裏に隠された異常の発見のためには,患者の正しいモニタリングが必要になる.当院の看護師は,呼吸に関する観察や記録が正しく実践できない現状が明確になっている.そこでバイタルサインの観察の重要性,予測・重症度判断の必要性,症例を用いた気づきを促す勉強会を積極的に行っている.また,コードブルー(Drコールと称す)症例を,テクニカルスキル・ノンテクニカルスキルの両側面から振り返りを行い,情報の共有や要請後の現場の統制,ノンテクニカルスキルに関する検証にチームSTEPPSツールを活用している.
 RSTでは,毎週水曜に他職種のメンバーで院内の人工呼吸器患者のラウンドを行っている.ラウンド日の朝にRST看護師が院内メールで患者の情報を配信し,ラウンド開始までに各メンバーが情報収集を行い,ラウンド直前にブリーフィングを行う.ラウンド中,早急に検討が必要な問題が生じれば,メンバーでハドルを行う.ラウンド終了時はデブリーフィングを行ない,情報の整理とメンバーの疑問の解決,対応策を話し合う.RSTラウンドでは他職種のメンバーが集まり,限られた時間内でラウンドを行うため,タイムマネージメントは重要である.RST看護師はリーダーシップを発揮し,メンバーが情報を迅速かつ的確に共有,把握できるよう活動している.
 当院のRRS・RSTの活動では,他職種のメンバーで情報を共有し,タイムリーに実践を行う場面が多くあるため,チームの結束力が重要となる.チーム医療の神髄は患者中心の医療であり,メンタルモデルの共有にある.RRS・RSTの活動の根本は「患者が少しでもよくなれば」など医療者個人,チームの目標である.その目標達成までのプロセスを円滑に進めるためにチームSTEPPSのツールを活用している.当院のRRS・RSTをさらに活性化するためには,チームSTEPPSのエッセンスを有効に活用し,他職種のメンバーも異常の早期察知と早期対応に関してのトレーニングや教育を受け,実践していくための環境調整が課題であると考える.