第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム4
急性期医療から在宅へと安全に繋ぐ地域連携を考える

2018年7月1日(日) 10:15 〜 12:15 第1会場 (5階 大ホール)

座長:三浦 稚郁子(公益社団法人 地域医療振興協会), 座長:中谷 茂子(医療法人マックシール 巽病院 看護副院長)

[S4-1] 救急医療に携わる立場から地域医療連携を考える

寺地 沙緒里 (東海大学医学部付属病院)

2025年問題に向け厚生労働省の構想の一つとして、「地域医療の充実」と「病院と地域連携強化」が挙げられ、各都道府県では地域医療の運用について議論・対策が行われている。それぞれの病院が所属する都道府県の方針に則り、病院や地域でも具体的な取り組みが行われている。
日本看護協会からはこの2025年問題に立ち向かうべく、平成30年の診療報酬改定に向けた要望書を提出している。この内容としては「1.効果的・効率的な医療の実現に資する看護機能の強化」と「2.医療と介護をつなぐ看護機能の強化」、「3.安全・安心な医療・看護提供体制の整備」、「4.医療・介護提供体制を支える看護職員の労働環境の整備」が挙げられている。
高度救命救急センターからの地域連携を考えた場合、上記4項目中「1.効果的・効率的な医療の実現に資する看護機能の強化」と「2.医療と介護をつなぐ看護機能の強化」の小項目のなかのうち特に「高度急性期、急性期医療のおけるケアの充実」と「専門性の高い看護師の地域における積極的な活用の推進」、「退院支援の取り組みの充実」、「入院中の認知機能やせん妄等の症状悪化を防ぐ取り組みの評価」が、急性期医療から患者がよりよい状態で、早期に地域の生活へ帰るために取り組まなければならない重点課題である。
この中でも救命救急センターの地域の中での役割は、A.外来やERからの地域から医療への受け入れ窓口としての役割と、B.集中治療・急性期治療管理後からの地域へ繋ぐことが挙げられる。平均在院日数の短縮に伴い、患者とその家族は「重篤な病」を抱えた状態で病院から地域へ帰宅することを与儀なくされる。患者・家族が帰宅後に抱える生活困窮の背景には、高齢化や、患者・家族背景の多様化(独居、老―老介護、経済的な困窮、核家族化で家族の協力が得られない等)があり、私たち医療者には個々の生活に合わせた看護ケアと、病を抱えた状態で生活すること前提に地域での生活支援を考慮した医療の提供が求められている。さらに、地域で病と共に生活していた人の慢性疾患の増悪や症状悪化等により、再入院を余儀なくされるケースに対応することも少なくない。
このように、患者の望む人生の在り方や家族の望む患者の予後、それに応えられるための医療者間の連携など、様々な課題を抱えている現状がある。
今回は救急医療に携わる立場から、患者にとってより良い地域医療とは何かについて考えていきたい。