第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム4
急性期医療から在宅へと安全に繋ぐ地域連携を考える

2018年7月1日(日) 10:15 〜 12:15 第1会場 (5階 大ホール)

座長:三浦 稚郁子(公益社団法人 地域医療振興協会), 座長:中谷 茂子(医療法人マックシール 巽病院 看護副院長)

[S4-2] 急性期医療から在宅へつなぐ地域連携~心不全ケアへの取り組みから~

青木 芳幸 (JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 看護部)

現在、本邦の慢性心不全患者は100万人規模とされているが、類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2025年には「心不全パンデミック」といわれる患者の急増が予測されている。さらに、有病率の上昇だけには止まらず、心不全患者は1年間で約30%が増悪により再入院する。増悪をきたした患者は救急搬送されることも多く、最初の受け皿となる救急や集中治療領域の負担も増加することが予測されている。本セッションでは心不全患者への支援を例に、増悪予防と地域における包括的支援の実現に向けた取り組みをもとに、急性期から在宅へつなぐ地域連携を考える。
本邦の心不全患者の特徴は、高齢で再入院率が高いこと。また再入院の誘因は治療・服薬に対するコンプライアンスの低下が最多を占める点があげられる。この様な背景から、退院後も疾病管理指導や病状モニタリングを継続し、増悪やアドヒアランスの低下を予防する目的で、2014年に心不全看護外来を開設した。また2015年から心不全患者の在宅訪問指導も開始し、退院後早期に介入することで増悪を未然に予防する取り組みにも力を入れている。
在宅へつなぐ地域連携においては、心不全患者を対象とした在宅チームとの連携を2015年から本格的に開始し、心不全ケアの勉強会の開催、在宅チームとの協働訪問など連携の地盤づくりを進めてきた。さらに再入院率の高い心不全患者が退院後も再入院することなく、それまでの生活を継続できるよう、当施設に限らず他施設の訪問看護ステーションとも協働で在宅訪問を積極的に行い、注意点やコンサルト基準を統一化し、同じ目標で支援することで、地域のケアの質向上にも努めている。また現在、当院の在宅チームとともに、強心薬が切れないことで入院が長期化している患者に対し、在宅でのカテコラミン持続投与行いながらの外泊を支援する「お家に帰ろうプロジェクト~Heart Care~」にも着手している。このプロジェクトの目標は、現状では制度が追いついていない病院外での強心薬の投与を実現することで、病院で最期を迎えることが多かった心不全ステージD患者が、望んだ環境で治療・療養を継続することにある。
今後更なる高齢化社会の進行とともに心不全患者の急増が予測されるが、急性期医療を担う基幹病院と在宅医療とが連携し合い、急性期からの流れを途切れさせることなく在宅まで引き継ぐことで、患者や家族のニーズにも含めた柔軟性のある包括的支援が実現されると考える。また同時に、この体制の実現は救急医療の圧迫回避にもつながる。「心不全パンデミック」の到来が間近に迫った今、我々はそれぞれの立場外にも目を向け、急性期から在宅までをシームレスにつなぐ歩みを着実に進めなければならない。