[S6-1] クリティカル領域におけるACPの意義と可能性
質の高いエンドオブライフ・ケアは、患者の苦痛緩和を大事にする、患者の自律を尊重する、不要な延命を避ける、愛する人との関係性を深める、家族の負担を軽くするという5つの要素があると質的研究結果から明らかになっている。意思決定支援の観点からこの5つの要素を捉えた場合、患者の自律を尊重した意思決定支援は、患者の望む医療の実現、患者の苦痛緩和、不必要な延命治療を避けることにつながり、その結果、家族の負担を軽くすることになると考えられる。つまり、患者の自律性を尊重した意思決定支援は、質の高い終末期ケアの中核的要素であると考えられ、クリティカルケア領域においてもアドバンス・ケア・プランニング(以下ACPとする)の推進が望まれる。ACPとは、将来の身体機能の低下や意思決定能力の低下を見据えて、前もって人生の最終段階における治療・ケア・療養生活について、患者、家族、医療者などの関係者が共に話し合い、患者の意向を尊重したケアを立案していくプロセスである。近年、ACPは患者のQuality of deathの実現に向けて様々なガイドラインや提言において推奨されている。特に、集中治療室における終末期医療の意思決定は、代理意思決定者が行うことが多く、治療選択に対する家族の苦悩が、家族のグリーフの過程に影響をもたらすことが明らかになっていることからもACPの推進は重要であると考えられる。
一方で、集中治療室に入室する患者は、治療による鎮静や意識レベルの低下によりACPが難しいケースが多い。また、近年、高齢化社会の到来により、集中治療により救命できた場合においても著しい身体機能の低下により、回復の見通しが予測できないケースも多い。このような症例では、患者の心身の脆弱性が高く、集中治療室におけるACPが侵襲的になるリスクが高いため、医療者は、ACPのタイミングをいつにするか、どのように進めていけばよいか葛藤することも多い。そこで、本セッションでは、クリティカルケア領域でACPを実施した事例を紹介し、クリティカル領域におけるACPの意義と可能性について述べたいと思う。
一方で、集中治療室に入室する患者は、治療による鎮静や意識レベルの低下によりACPが難しいケースが多い。また、近年、高齢化社会の到来により、集中治療により救命できた場合においても著しい身体機能の低下により、回復の見通しが予測できないケースも多い。このような症例では、患者の心身の脆弱性が高く、集中治療室におけるACPが侵襲的になるリスクが高いため、医療者は、ACPのタイミングをいつにするか、どのように進めていけばよいか葛藤することも多い。そこで、本セッションでは、クリティカルケア領域でACPを実施した事例を紹介し、クリティカル領域におけるACPの意義と可能性について述べたいと思う。