第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6
クリティカルケア領域におけるACPの課題と可能性

2018年7月1日(日) 14:50 〜 16:30 第3会場 (2階 桃源)

座長:戸田 美和子(公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院), 座長:正垣 淳子(神戸大学大学院 保健学研究科)

[S6-3] 救急患者のACP/(代理)意思決定支援のあり方を考える ~看護の役割発揮に向けて~

比田井 理恵 (千葉県救急医療センター 看護局)

 少子超高齢多死社会への移行にともない、救急搬送される患者の病態も複数疾患を兼ね合わせるなど、より複雑で多診療科・多専門領域にまたがる状況が多く見られるようになった。元来救急医療の現場には、年齢や社会背景、疾病の発症/受傷状況などにおいて、多様な患者が有無を言わさず搬送されてくる。その多くが突然生じた何らかの出来事をきっかけに、日常から非日常への生活を余儀なくされる。同時に、健康や身体の一部・機能、大切な人やものなどの何らかの喪失体験をともない、その先の人生や生き方の岐路になり得る重要な選択を求められる人も多い。そのような判断や決定を行う際に最も重要となるのが患者本人の意思であるのは言うまでもない。しかしながら、患者自身の意思表明が困難なことの多い救急医療の現場では、その選択の際に、患者の意思や考え方、希望に添えているのか、患者の生き方に適っているのかという点において、家族とともに話し合い模索していくことが求められるが、時間的猶予の不足などから十分に行えていないのが現状である。このような中で、少しでも患者の生き方や考え方を反映した医療につなげる一助となり得るのがAdvance Care Planning(以後ACPとする)である。
 ACPは、心づもりの支援(清水,2015)とも言われており、「自分がどのように生きていきたいか」や「こんな場合にはどのように考えるか」などの考えや思いを家族や友人、医療者などと話し合い、表したもので、Advance Directive(以後ADとする)よりもプロセスの意味合いが強い。ACPやADの目的は、終末期に至った時に「蘇生や積極的治療をする/しない」という判断や意思決定自体ではなく、生命が脅かされたときに、その人らしい、尊厳を大切にした生き方や死に方を導くことが本質といえる。このことから考えると、身体状況が変化する前だけでなく、変化後にもその人の考えや生き方を理解し、その状況における最善が何かを検討するための、心づもりをもとにした話し合いの時間やコミュニケーションが必要であり、それにより患者・家族・医療者の納得につながると考える。
 今回ACPの課題や可能性を考えるにあたり、がんで最期の治療にかけて入院したものの、予後宣告後に急変した事例、また外傷により寝たきりで生活をしていたが急変し搬送された事例、の経験をもとに、救急医療におけるACPの有効性や課題とともに看護が果たす役割を検討していきたいと考えている。