[SL1] クリティカルケア領域に求められる危機管理と医療安全の最新動向
クリティカルケア看護を実践する上で、最新の危機管理医学の考え方、危機管理位医学の実際の医療現場への応用である医療安全学の基礎知識は常にup-dateすべき重要な事項である。ここでは、危機管理医学における近年の新しい事項、医療安全学における国際水準と日本の医療現場の乖離などについて紹介する。危機管理医学において近年の topicsは、CBRNE(Chemical, Biological, Radiological, Nuclear, Explosiveの頭文字)というしばしばテロの種別に用いられるkey wordsに代表される。
C剤は、クアラルンプール空港で第2世代の化学兵器であるVXのバイナリーが用いられ、ロンド郊外では第3世代化学兵器であるバイナリータイプのノビチョクが使用される事態が起きている。第3世代化学剤については、現行の装備では検出が不可能であり防護服も効果をなさない。さらに、これらの化学剤が市民生活の場面で使用されていることが大きな問題であると言える。
Bでは、気候の温暖化と訪日外国人の急増に伴いジカ熱、デング熱などが国内に入るのは時間の問題であろう。国内発症が常在化しつつあるSFTSやエボラ出血熱、鳥インフルエンザなどRNAウィルスに対しては新たな治療薬(RNA 依存性RNAポリメラーゼ阻害剤)が富山大学において開発されており我が国をはじめとして各国で国家備蓄がなされているので概要を紹介する。
RNは今後の国内原発の廃炉作業で諸問題が顕在化するであろうし、Eにおいては東京オリンピックを控えており爆傷に対する応急手当てのup-dateも喫緊の課題であろう。
医療安全は、国際水準のシステムとは乖離があり、病床数削減、包括地域ケアによる在宅医療推進に伴い、医療安全の概念を迅速に包括医療、在宅医療に展開することが求められている。
国際的には、Patient Safety (直訳すれば患者安全)が正式な訳語であり、我が国の「医療安全」という訳語は誤っている。
「医療安全」なので病院の管理者がガバナンスを発揮するという誤ったミスリーディングによる力学構造が我が国固有のものであることを理解し、クリティカルケア看護における正しい「患者安全」を考える手がかりを提供したい。