第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

特別講演

特別講演2
高度救命救急センターにおける終末期-看取りの場としての役割-

2018年6月30日(土) 14:30 〜 15:30 第1会場 (5階 大ホール)

座長:山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科)

[SL2] 高度救命救急センターにおける終末期-看取りの場としての役割-

三宅 康史1,2 (1.帝京大学医学部 救急医学講座, 2.帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

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平成28年版厚生労働白書によれば、2015年の高齢化 (65歳以上) 率は26.7%、年間死亡者数は129万人だが、2040年には同36.1%、168万人に達すると見込まれている。現状では80%以上が医療機関で死を迎えており、その状況に変化の兆しはない。当院高度救命救急センターでは年間約2,500例の三次救急症例を受入れ、そのうち心肺停止例(CPAOA)が最も多く600例、次いで外傷(AIS≧3)300例、脳血管障害200例、呼吸不全100例、敗血症100例と続く。65歳以上が半数を超え、75歳以上は1/3を超える。
三学会合同の救急・集中治療における終末期の判断は、(1)不可逆的な全脳機能不全が十分な時間を掛けて診断された場合、(2)人工的な装置なしには生命維持ができず、生命維持に必須の複数臓器が不可逆的な機能不全である場合、(3)追加で行える治療法がなく、現状の治療を続けても早晩死亡に到る場合、(4)回復不可能な疾病の末期であることが積極的治療後に判明した場合、である。具体的には、心肺停止後の蘇生後脳症の遷延(1)、PCPS/ECMO/CHDF/人工呼吸器に依存して生命維持が図られている状態(1)(2)、DICを含む多臓器不全とその末期的状況(1)(2)(3)、癌や肝硬変、COPDの末期(4)がこれにあたる。救命救急センターで終末期としての対応が必要となるのは(1)(4)のケースが多い。
急病者が発生すると、対応する救急隊は決められたプロトコール、すなわち発症経過、現場の生理学的異常、その急激な悪化、明らかな解剖学的異常、傷病者因子・属性(年齢、既往疾患、ADL他)に応じて現場の判断により三次搬送が決定される。掛かりつけ症例以外は大多数が初診であり、傷病者因子・属性のみならず身元すら明らかでない場合もある。受入れ救命救急センターでは、搬送症例の病態が原疾患そのものの悪化によるのか、合併した新たな重症疾患によるのか、実は元々の病態なのか、そして回復可能ならばどこまで侵襲的な治療を可とするのか、を見極める必要がある。それにはある程度の時間と専門的な判断を要する。その間死亡に到らぬよう救命治療を先んじて講じつつ、並行して診断へのアプローチと、ADL、既往歴とその治療経過、予後不良の場合の治療継続に関する本人の考え、それが確認できない場合には家族や血縁者を探し出して本人の意志を推測していく。鍵となる家族がいない場合には、受け持ち医療チーム内で多職種によるカンファレンスを繰り返し、決められた手順を踏んで誰もが納得いけるように今後の方針についてコンセンサスを形成し、院内倫理委員会に諮ってその是非の判断を仰ぐことになる。そのため初療室で救命のために気管挿管した症例でも、最終的にそれを抜去して患者の事前指示に従うこともあり得る。高齢者のみならず家族や社会と疎遠な単身者の場合も同様の手続きが必要となる。