第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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交流集会

[AC3] 知って得する人工呼吸器離脱プロトコル

2019年6月15日(土) 15:00 〜 16:30 第4会場 (1F 中会議室)

企画:人工呼吸器ケア委員会

15:30 〜 15:45

[AC3-2] 人工呼吸器離脱プロトコルの活用~特定行為として実践している立場から~

○辻本 雄大1 (1. 奈良県立医科大学附属病院)

キーワード:人工呼吸器離脱プロトコル 、特定行為

 人工呼吸器は、患者の救命において重要な役割を果たす一方で、人工呼吸器関連肺障害(VILI)や、人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの原因となり、長期間に及ぶことで、せん妄やICU-AWなどのリスクが高まり、入院期間や予後にも影響を及ぼす。そのため、人工呼吸器の必要がなくなれば、できるだけ早期に人工呼吸器からの離脱を図ることが重要である。
 人工呼吸器の離脱は、人工呼吸器のサポートを段階的に減少し、患者の自発呼吸を維持、増強することを意味し、定時の手術などで早ければ数時間、ARDSなど二次的肺障害に至ると数日から数週間以上の時間をかけて行われることもある。人工呼吸器離脱で重要なことは、患者の状態が、「軽症」「重症」にかかわらず、常に離脱の可能性について多職種連携チームで議論し、目標設定と必要なモニタリングの実施、情報共有、評価を行い、患者にとって最適な人工呼吸器離脱の時期を見極めて、可能な限り速やかに離脱させることにある。
 人工呼吸器離脱の方法には、大きく分けて、医師が漸減的に設定を変更していく方法と、一連の流れをプロトコル化したもの2種類がある。プロトコルに従い離脱過程を進めることで、人工呼吸器期間の短縮、ICUの滞在時間の短縮、VAPの発症率の低下などが報告されている1)。本邦では、2015年に3学会合同の「人工呼吸器離脱プロトコル」2)が公表され、人工呼吸器離脱に携わる全ての医療従事者が多職種連携チームとして標準的な介入ができるようになることを期待されている。
 当院では、2016年度より、「特定行為に係る看護師の研修制度」(以下、特定行為研修)を、指定研修機関として行っている。特定行為区分のうち、「呼吸器(人工呼吸療法に関わるもの)の中に、「人工呼吸器からの離脱」や「人工呼吸器がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整」が含まれている。これらの内容は、前述した人工呼吸器離脱プロトコルの内容を包含している。特定行為は、手順書と呼ばれる、包括的指示書にのっとり、「看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲内」であれば、該当する診療の補助内容を実施できる制度である。2019年1月現在、当院ICUでは、計3名の特定行為研修修了者が勤務しており(2019年3月2名終了予定)、手順書のもとで人工呼吸器からの離脱を行っている。今回、人工呼吸器離脱プロトコルの概要を説明したのち、特定行為を終了した立場から、人工呼吸器離脱に対する当院の現状と課題について、私見を交えて述べたい。

1)Girard TD,et al:Efficacy and safety of a paired sedation and ventilator weaning protocol for mechanically ventilated patients in intensive care(Awakening and Breathing Controlled trial).a randomized controlled trial.Lancet 371(9607)126-34,2008.
2) 日本集中治療医学会,日本呼吸療法学会,日本クリティカルケア看護学会.人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル.http://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ridatsu1503b.pdf.2019年2月8日閲覧.