第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL1] 医療の質を可視化するワザ

2019年6月15日(土) 15:40 〜 16:40 メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

演者:嶋田 元(聖路加国際大学、聖路加国際病院)
座長:立野 淳子(小倉記念病院)

15:40 〜 16:40

[EL1] 医療の質を可視化するワザ

○嶋田 元1,2,3 (1. 聖路加国際大学 情報システムセンター、2. 聖路加国際病院 ヘルニアセンター、3. 聖路加国際病院 消化器・一般外科)

キーワード:医療の質、質指標、質改善

 質の高い医療を提供することは医療に関わる全ての人々の思いである。
 先人たちの知恵と努力と成果により、新たに病態が解明され、新たな治療法が開発され、健康アウトカムが改善するなど、医学は確実に進歩している。その意味で現在提供されている医療・ケアは洗練化・高度化され、昔に比べよりずっと質が高いことは明白である。
 今も昔も医療サービスの目的は望ましい健康アウトカムを達成するために行われる。望ましい健康アウトカムとは単に生存率の延長や合併症の減少だけにとどまるものではない。自覚症状、日常生活制限、満足度・QOL、コストも健康アウトカムに含まれ、さらには患者個人の好みやニーズや価値観などに配慮した医療・ケアの提供も求められる。
 医療の質の評価軸はドナベディアンモデルである「構造」「過程」「結果」が理解しやすい。各項目の関係は「医療が実践される構造的特徴が医療の過程に影響を与え、過程の変化が患者の健康状態に対する効果に影響を与える」とされる。つまり最終結果である健康アウトカムを変えるためには、過程の変化すなわち我々の医療・ケアの変化が必要なのである。
 医療の質を評価することは、日常診療で提供している医療・ケアがどのように提供されているか、適正なのか、過剰・過少なのか、そもそも提供されていないのかなどをまずは知ることからはじまる。物事を知るすべとして「測定を行い数値化すること」は極めて一般的な手法であり、測定なくして質の改善は困難である。
 1年前、数カ月前の自身が提供してきた医療・ケアを数値化・指標化することで「本来提供するべき医療・ケアが提供できていないと知ること」が可能で、課題が認識され質改善への第一歩となりうる。課題が皆に認識され要因が判明すれば改善策の立案や実践、評価は比較的容易であろう。